その時が来るまで、大切に ページ30
あ、この絵好きかも。
所謂、抽象画。
柔らかな色彩が何色も使われ、その中に光が差し込んでいる。
絵の横に付けられた解説によると、慈愛の心を描いたものだとか。
画家が自分の子どもを思って描いたらしい。
「おや、Aくん。その絵が気に入ったかね」
「温かみのある、素敵な絵だね」
『誉さん、東さん。はい、何となく好きだなぁって』
「ふむ。この画家はまだ若手でね、数年前に学生時代の恋人と結婚してから名が知られるようになったのだ」
『へぇ…学生時代の恋人と…』
「やっぱり、誉は芸術に詳しいね」
時刻は15時。
あれから、そのままストリートアクト反省会に移った紬さん達にランチをご馳走になり、帰寮したと思ったら誉さんと東さんに誘われ、現在美術館。
誉さんが出版社の人にチケットを貰ったとかで、東さんと私もご相伴に預かることとなったのだ。
「この絵、グッズとしてお店に売られてるんじゃない?」
『そうですね。見つけたら買おうかな?』
ちょうど展示はさっきの絵で最後だったので、そのまま美術館内のギフトショップへ向かう。
平日なのもあって、館内の人影は疎らだ。
美術館、たまに来ると心安らぐ感じがする。
「お店を見終わったら、アフタヌーンティーにしない?近くに美味しい喫茶店があるんだ」
「素晴らしい!ちょうど私の茶葉も無くなる頃なのだが、その喫茶店で販売はしているかね?」
「オリジナルブレンドが売られてたんじゃないかな?チーズケーキもおすすめだよ」
『チーズケーキ!』
「ふふ、目が輝いたね。可愛い」
「Aくんの笑顔はいつも、見る者を幸せにするね」
『ぐぉ…色気の暴力…』
東さんと誉さんから優しく微笑まれて、思わず顔を覆う。
もはや犯罪級の色気。タダで振り撒かないでいただきたい。
直視してはまずい、とショップ内の棚に視線を巡らせる。ふと目に留まる商品があった。
「さっきの絵だね。ポストカードか」
「確かに、この絵は誰かにメッセージを贈るのにぴったりな色合いだ。部屋に飾っても素敵だね」
『…よし、これ買います』
「おや、自分用かい?それとも誰かに贈るのかな?」
『今のところ未定、ですかね?』
この人に贈りたい、そう思った時に、その時の気持ちを添えて贈ろう。
「Aらしくて、いいね」
「うむ、Aくんらしい」
ふわふわと柔らかく、温もりのある優しい絵。
この絵に相応しい言葉が見つかるまでは、私の宝物。
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わず - すごく面白いです!更新楽しみにしてます! (2019年9月10日 14時) (レス) id: 1511d926d3 (このIDを非表示/違反報告)
rena(プロフ) - 更新待ってます (2018年8月30日 2時) (レス) id: 8104f6caff (このIDを非表示/違反報告)
さーや(プロフ) - すごく面白くていつも楽しみにしています!更新応援してます! (2017年9月6日 8時) (レス) id: a8b7ed9872 (このIDを非表示/違反報告)
おにぎり。 - とてもとても面白くて、何回もみています!ゆっくりことこととお待ちしております。 (2017年8月5日 19時) (レス) id: 392125dbe2 (このIDを非表示/違反報告)
ことみ(プロフ) - 最高でした♪ 続き、楽しみにしてます! (2017年7月4日 23時) (レス) id: c79b5cac48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:群青 | 作成日時:2017年6月14日 9時