お弁当 ページ11
『や、やっと撒けた…』
響くんが爆弾を投下しまくってくれたおかげで、私は生徒会室を出て1人になるまでにえらい苦労を要した。あの王子様、学園を焼け野原にする勢いだったな。
満身創痍の中、トイレに入って漸く落ち着いた。ここのトイレは、使う生徒が少なくて気楽でいい。
手を洗い廊下に出ると、窓の外が視界に入った。
ちょうど正門が見えるのだが、何やら人だかりができている。
『…嫌な予感』
学園の生徒、それも女子ばかり。その集団と塀の陰になって、中心にいる人物が見えない。
何であれ、学園に用があって誰かがあの場にいるとしたら、会長として対応に出ない訳にはいかない。先生が出てくれればいいんだけど、恐らく会議が始まったばかりだし。
SHRの開始まで、あと15分程。手早く済ませないと。
私は急いで階段を降りた。
＊
『うわあ』
嫌な予感、的中。
足の回転速度を速めつつ、大きく息を吸った。
学園の女子生徒軍団の中心にいたのは、何とびっくり。
『至さん！』
「あ、A」
ハイパー愛想笑いを浮かべつつ、女子生徒の対応をしていた至さんは、私を見て安堵したように息を吐いた。
会長の出現に、生徒達は自然と道を開けてくれる。あぁ、また噂されるだろうな。
兎にも角にも、至さんを逃がしてあげないと…。
『どうしたんですか』
「助かったよ、Aが来てくれて。あいつら、絶対気付かないし」
『あいつら？』
「咲也はワンチャンあるかと思ったんだけどね」
至さんが[これ、よろしく]と差し出したのは、2つの包まれた弁当だった。
それを視認した瞬間、私は一瞬だけ顔を歪めて、周囲に生徒がいることを思い出し、取り繕った。
『成程。お手数おかけしました』
「全然。あいつらに[馬鹿だな]って言っといて。折角のAの弁当、忘れるなよって」
『それは勿論、しっかりと』
「俺も今日の昼が楽しみだよ」
『何てことないお弁当ですよ。ってか至さん、時間』
「うわ、やばい。じゃ、いってきます」
『いってらっしゃい』
ゆるゆると手を振って、至さんは路肩の車を発進させ、遠ざかって行った。
私は自分の手にある弁当2つを見て、静まり返っていた女子生徒が次第に騒がしくなるのを確認し、もう一度息を吸った。
『静かに！先程の男性は友人です。私はこれを届けなくてはいけないので、失礼します。まもなく予鈴がなります、皆さんも教室に戻るように』
それでは、と半ば言い逃げのように、私はその場を離れた。
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わず - すごく面白いです！更新楽しみにしてます！ (2019年9月10日 14時) (
レス) id: 1511d926d3 (このIDを非表示/違反報告)
rena(プロフ) - 更新待ってます (2018年8月30日 2時) (レス) id: 8104f6caff (このIDを非表示/違反報告)
さーや(プロフ) - すごく面白くていつも楽しみにしています！更新応援してます！ (2017年9月6日 8時) (レス) id: a8b7ed9872 (このIDを非表示/違反報告)
おにぎり。 - とてもとても面白くて、何回もみています！ゆっくりことこととお待ちしております。 (2017年8月5日 19時) (レス) id: 392125dbe2 (このIDを非表示/違反報告)
ことみ(プロフ) - 最高でした♪ 続き、楽しみにしてます！ (2017年7月4日 23時) (レス) id: c79b5cac48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：群青 | 作成日時：2017年6月14日 9時
