3.先へ ページ5
『ここかい？』
ゴミが散らばったボロボロなトタン板で誂えた小屋。
貧民の家としては、中々治安もよく、整っている。
腹も空いていれば雑言を吐く、気力も無くなるから。
ここは、治安が良いというより静寂だ
そこらに遺体が転がっている。
おおかた、餓死だろうが。
奥へと進むと、誰かの気配がした。
ロボロは暗い空間をさらに奥へと進む
ｼｬｷﾝ
ふと、空気を斬る音がした。
手持ちの剣を盾代わりに使う。
『……何のつもりだ』
鋭く睨む。
それはロボロが風魔法を使ったからだ
「なんでって……ここは貧民街。
騙して引き込んで、殺すんや。
死にたくなきゃ、金になるもん出し」
余裕ぶった口ぶりとは反対に、表情には必死さが見て取れた。
『……どうして、そんなに焦ってる』
思ったことをそのまま口に出す。
どうやら図星だったようで。
「は、別に焦ってるとか」
脂汗が頬を伝う。
『政府に追われることでもしたか？
それとも……何か、匿っているか？
シュヴァルツ家は警察と協力している。
場合によっては…君を殺すかな』
「それは……」
彼の横を通りすぎる時、俺は極小の威力の幻術魔法を放った。
それは弱った彼にはよく効いて、すやすやと眠り始めた。
彼を壁に寄りかからせて、構わず奥へと進んだ。
奥には、少年がいた。
大怪我のせいで菌が入り、熱を出しているようだ。
荒く呼吸をして、何かを求めて手をさ迷わせている。
『ロボロはこんな少年を匿うために、私から金を奪い取ろうと…
まったく、人は計り知れないな。』
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作者名：かどユキ 芝 | 作成日時：2021年5月24日 23時
