＊ ページ15
夢主said
パーティは順調に進んでおり、今のところ問題は全く起きていない。
同性だからという単純な理由で護衛を買って出たが、私と女性ーー夫人は真反対で、流麗な動きで人々と会話をしていた。
自分もこんな風に、お淑やかで慎ましかったらーーなどという、巫山戯た考えが頭を横切る。
「………どれだけ着飾ってもさ、ギャングには関係ないのにね」
人生で初めての口紅は返り血。香水ではなく鉄の匂いか硝煙の香り。ハンカチの前に入れるのは仕込みナイフ。
「ーーどうかしたの？」
「！あ、いえ……何でも、ないです」
「そう？…あら！具合が悪そうね」
夫人は私の額に手を当てて、自分の額の熱と比べていた。
「平熱かもしれないけれど…一応、別室で使用人が控えているから行きましょうか」
「だ、大丈夫です！というか困ります！自然にお願いします！」
「ふふ、表向きは知り合いなのでしょう？具合の悪い知人がいれば心配をして連れて行くのが淑女の嗜みよ」
何とも美しい顔でそう微笑み、私は抵抗出来ずズルズルと会場を後にすることになってしまった。
＊
「水と、頭痛薬を貰ってきて下さる？」
「畏まりました」
あなたの仕事を邪魔することはできないから、とふんわりとした笑みを夫人は浮かべた。
「御免なさいね。薬を飲んだら戻ってもらうことになるのだけれど…」
「構いません。お気遣いありがとうこざいます」
こんな風に女の人に心配されたのは本当に久しぶりで、遠い記憶が蘇りそうになりーー私は慌てて、意識を保った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 40人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：茜 | 作成日時：2019年4月28日 19時
