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けれど真弦さんは親が有名人であることを隠した。
親の七光だけは避けたかったらしい。
自分の力でのしあがり、立派な男性ミュージシャン・俳優としてやってきたのがこの人だ。
私はこの人が好きだ。
「…確か、子役時代の時に共演したんだっけ?
あの人が父親役で…。」
そう。
私はこの人と共演したことがある。
子役時代、私は主演だった。
映ること自体嬉しかったし、しかも自分に自信もついてきて、何より周りの人の笑う顔が好きだった。
そして幼いながらに達成感も私はその時に知っていた。
でもその全てを教えてくれたのは、真弦さん。
撮影中、真弦さんは失敗が少なくて大人の中でもすごいんだなぁと思った。
あるシーンで私が失敗を繰り返してしまったとき、休憩中私が悔しくて泣きじゃくっていると声をかけてくれて…。
『胡珀ちゃん。悔しかったのか。…そーかそーか。
大丈夫。胡珀ちゃんならできるよ!
…実を言うとなぁ…おじさんも、沢山失敗したんだよ。』
『え?おにーさんも?』
『あぁ、だからな、大丈夫だ。たくさん失敗しても大丈夫だぞ。失敗してたくさん勉強するんだ。』
『…? 失敗しないために勉強するんじゃないの?』
『勉強はな、次の目標に行くための「一歩」なんだよ』
『……??』
『まだ、分からないか!
…じゃあ胡珀ちゃんは演技は好き?』
『うん。好きだよ。だって、楽しいから!』
『そうか。そしたらなぁ…、それを待ってくれてる人もいるんだ。
胡珀ちゃんの一生懸命さが伝わればきっと監督もOKを出すよ。さ、あともう一息だ。』
『うん…‼』
そう言って頭を撫でてくれたのを覚えている。
そしてその後も映画の撮影がずっと終わるまで、私は真弦さんにべったりだった。好きな人は誰かとその時に聞かれたら即答で「真弦さん!」と答えていただろう。
「真弦…さん。会いたいなぁ…。」
ぽつりと呟いたその言葉はまふ達に聞こえたみたいだった。
「なら、会わせてあげようか?」
「え、そらるが?いいよ〜。
真弦さんだって忙しいだろうし。」
首を少し左右に振って拒否する。本当は少し会いたかったなんて気持ちもあるけれど、私が…こんな姿で会うわけにはいかない。夢を叶えた姿を彼には見せなきゃいけないから。
その気持ちを汲み取ったのか、まふはにこっと笑いかけた。
「大丈夫ですよ。胡珀の気持ちを僕たちは尊重しますし、応援しますからね!」
その言葉に対して私はありがとうと返すことしかできなかった。
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朧月天音(プロフ) - ねねさん» ありがとうございます!これからもがんばりますね。 (2021年2月1日 23時) (レス) id: b60a9fb89a (このIDを非表示/違反報告)
ねね(プロフ) - 朧月天音さん» いえいえ!この作品とても面白くて大好きです!これからも応援してます! (2021年2月1日 22時) (レス) id: 49c6cbab24 (このIDを非表示/違反報告)
朧月天音(プロフ) - ねねさん» わわ、その通りです!速攻で直しました。ありがとうございます。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: b60a9fb89a (このIDを非表示/違反報告)
ねね(プロフ) - 失礼だったらごめんなさい28話のところ体温28度じゃなくて38だと思います。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 49c6cbab24 (このIDを非表示/違反報告)
朧月天音(プロフ) - 猫築かなめさん» わぁぁ!好きです((唐突すぎるわ。 ありがとうございます!うらたさんはですねぇ…次の次くらいに登場します!読んでくださりありがとうございます。本当に! (2021年1月23日 21時) (レス) id: b60a9fb89a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朧月 天音 | 作成日時:2020年7月25日 21時