その文豪達、ヤンデレにつき。【短編】 (ページ10)

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共有　　＊旧双黒ページ10

「ごめんなさい、赦してっ･･･！出してくれ･･･｣

力なく紡ぐ言葉は同情してしまいそうな程に細く弱い。
日本人形のように美しい黒を強調した白いシボリが生える着物。

絢爛豪華な調度品

朱色の掛け軸に

美しく彫刻が施されたーーーー鉄格子

天井には幾重にも張られた札

Aの、力を封じる札

自由気ままに生きる彼女は自由を奪われ段々と弱りきって行く

爪を奪われたライオン
自由を奪われた鷹
番いを奪われた鳩は耐え切れず死んでしまうというが

自由を奪われ、自身の爪とも言える能力を封じられ、親しい者に会えない彼女は、どうなるのだろうか？

死ぬことはできない、だって一日中監視されているのだ

徐々にゆっくりと彼女の心は壊れていく軋む音を立てて

それでも完全に壊れないのは閉じ込めた相手の頭が恐ろしく良いから

「よぉ、A？気分はどうだ？｣
「ちゅ、や･･･さん･･･｣

鉄格子の鍵を開けて中に入った帽子を被った男は愛おしむようにAの頬を撫でて首筋に唇を寄せると華を咲かせた

「ちょっとちゅーや？抜け駆けは酷いよ？｣
「だざい･･･｣

ニコニコと優しげに微笑み手を上げだ青年が少女を抱きすくめる

「ふふっ、A君が居るから今日も頑張れたよ
そうそう、敦くんと芥川は今日も元気に仕事を一緒にしていたよ｣

ピクッと少女が反応する。
心が壊れない、その理由が家族と呼べる彼らの日常の報告

あぁ、今日も元気にしてるのか、そう思うだけで少女はうれしかった。

だから、目隠しされた真実に気づけない

普段仲の悪い二人が一緒に仕事をすることがありえない事実に

その理由が自分だということに

(可愛い可愛いA君。もう出してはあげないよ、だから･･･)
(早くここまで堕ちろよ？)

彼女を共有し妖しく笑う大人

(A･･･っ！どこへ消えたのだ･･･！？)
(どこ？ねえAっ！どこに行ったんだ･･･！)

捕われた少女を探す家族が二人･･･。