捌。 ページ9
最終選別が始まった。
さっき集まっていた人たちは、ほとんど男の人だった。身長が高くて、身体は鍛えられていて、戦いやすそうな体格の人たちばかりだ。
他の受験者の目には、私が一番弱そうに映っていることだろう。
「うっ、うわあああ!助けてくれええ!」
近くで悲鳴が聞こえたので移動すると、貧弱で弱そうな見た目の鬼がいた。
「俺の獲物だ!」
無駄な体力は使いたくなかったので、呼吸を使わずに鬼の首を斬る。呆気なく鬼は死んだ。
あの鬼もこのくらいの実力だった気がする。……ああ、腹が立つ。こんな弱い奴等に屈しそうになっていたなんて。
怒りが腹の底で渦巻いている。なんて気持ちの悪い感覚だろう。
「ひっ……。頼む、誰か助けてくれええ!」
またも、近くで悲鳴が聞こえた。あんなに恵まれた体格ばかりだったのに、実力が備わっていないなんてもったいない。
私はただでさえ筋肉の付きづらい体質だから、とても苦労しているというのに。
溜め息をつきながらも、声の方向へと移動した。
そして、最終選別六日目の夜。
今日を乗り切れば選別は終了する。
この六日間、悲鳴が聞こえては移動し、鬼を斬るという単純作業の繰り返しだった。
「うわあああ!嫌だあああ!」
……また、聞こえた。
いい加減飽き飽きしながらも声の主の元へ向かう。するとそこには、人の死体の山があった。
この選別で人の死体を目にするのは、初めてのことだった。思わず目を見開く。
死体の山のすぐ近くには、大型の異形と見られる鬼が人を喰っていた。
「ん?……いや、お前じゃない。オイ娘、この選別で鬼を殺した奴を探してるんだ。大人しく言えば、苦しまずに殺してやる」
『……最終選別で鬼を斬ったのは、選別を受けた皆。誰か一人が斬ったわけじゃないよ』
「お前……なんだか、苛々するなァ。苦しんでも自業自得だ。ヒヒッ」
ああ、気持ちが悪い。吐きそうだ。
鬼が大嫌い。
自分ばかりが有利な時間帯に人を襲う、腐った性根。日に焼けることがないからか、真っ白で染まらない肌。気持ちの悪い目。声も、何もかも、鬼のすべてが大嫌いだ。
「ヒヒッ……。強い奴を喰えば、力が上がると思ったんだけどな。見つからないな、なかなか――ん!?」
『……あ、やっと気付いたみたい。頸が斬られてるのに気付かないなんて、命取りだよ。大丈夫?』
驚いた顔をした鬼に、とびきりの笑顔で言った。
『もう二度と生まれてこないでね。さよなら』
これは私の最上級の皮肉だ。
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わらび餅 - あおいさん» 本当に何回も、ありがとうございます!すっごく嬉しいです! (2020年3月6日 20時) (レス) id: eec3d5a46f (このIDを非表示/違反報告)
あおい - 題名、変わりましたね!とっても素敵です....!続きがめっちゃ気になります。次の更新も楽しみに待ってます! いつもの長文野郎より。 (2020年3月5日 21時) (レス) id: 4eed4f74a9 (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅 - 萌葱なごみさん» えええ……マジですか!?全然出てこないんですけど、もしかしてスマホのスペックが低いんしょうか……。何か他の読み方は知りませんか? (2020年3月1日 20時) (レス) id: eec3d5a46f (このIDを非表示/違反報告)
萌葱なごみ - しまと打って探せば出てきます! (2020年3月1日 18時) (レス) id: be00a3fd43 (このIDを非表示/違反報告)
萌葱なごみ - 嶼ですよ! (2020年3月1日 18時) (レス) id: be00a3fd43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:karin | 作成日時:2020年2月9日 20時