参拾陸。 ページ37
『ふざけないで。女だからって舐めて痛い目見ても知らないから。……杏寿郎さんが鬼になんて、なるわけないでしょ』
杏寿郎さんは誰よりも優しくて、強くて、頼もしい人だ。鬼になんてならない。絶対に、何があってもありえない。
「聞こえなかったか？女に用はない」
『っ……！』
お腹に拳が入った。肋骨が数本折れたのがわかる。
でも、気付かない訳がない。
この鬼は手加減をした。本気で殺そうとすればすぐに出来たはずなのに、骨を折るだけに留めた。
……どうして？
「炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり」
『桜の呼吸 参ノ型 舞い桜』
二人で斬ってかかっても、すぐに回復してしまう。杏寿郎さんは片目が潰れて骨も砕けている。……守りたいのに、守れない。
かく言う私も重症だ。右足の骨は折れ、肩にざっくりと大きな切り傷がある。
それでも、手加減されているのは明らかだった。
どうして手加減されているの？女だから？
でも、手加減された状態なのに致命傷を与えられない。それはやっぱり、私が弱いからだろう。
「杏寿郎死ぬな」
杏寿郎さんがボロボロになって戦っているのに、私が本気を出さないといけないのに。
肩の失血で立っているのがやっとだ。
「炎の呼吸 奥義――」
「破壊殺・滅式――」
動け、足。
もう守られてばかりなんて嫌だ。
砂埃で見えない。猗窩座の姿が見えたら、すぐに斬りかかりにいく。
死ぬかもしれないけど、今は杏寿郎さんの方が危ない状況だ。
よし、だんだん視界が開けてきた。ちゃんと見て、確実に急所を――。
『……え？』
砂埃が晴れて飛び込んできた光景。それは、鳩尾に猗窩座の腕が貫通した杏寿郎さんの姿だった。
動いて、お願いだから。助けに行かないと死んじゃう。杏寿郎さんが、いなくなっちゃう。
『……うああああ！』
ふざけるな。
杏寿郎さんは私の家族なのに、なんで。
無我夢中で斬りかかりに行くも、猗窩座は自分の腕を切って森へ逃亡してしまった。
せっかく杏寿郎さんが頸を斬りかけていたのに逃げられてしまった。炭治郎が刀を投げたけど、結局それは何の意味も持たない。
『……きょう、じゅろう、さん』
息がうまくできない。
「夜桜、すまない。先に竈門少年と話をしてしまうから、少しだけ待ってくれ」
怒りの感情が収まる時間を作ってくれようとしたのだろう。杏寿郎さんは本当に優しい。
どうしよう。
このままだと、杏寿郎さんが死んじゃう。
嫌だ。
そんなの、絶対嫌だ。
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わらび餅 - あおいさん» 本当に何回も、ありがとうございます！すっごく嬉しいです！ (2020年3月6日 20時) (
レス) id: eec3d5a46f (このIDを非表示/違反報告)
あおい - 題名、変わりましたね！とっても素敵です....！続きがめっちゃ気になります。次の更新も楽しみに待ってます！ いつもの長文野郎より。 (2020年3月5日 21時) (レス) id: 4eed4f74a9 (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅 - 萌葱なごみさん» えええ……マジですか！？全然出てこないんですけど、もしかしてスマホのスペックが低いんしょうか……。何か他の読み方は知りませんか？ (2020年3月1日 20時) (レス) id: eec3d5a46f (このIDを非表示/違反報告)
萌葱なごみ - しまと打って探せば出てきます！ (2020年3月1日 18時) (レス) id: be00a3fd43 (このIDを非表示/違反報告)
萌葱なごみ - 嶼ですよ！ (2020年3月1日 18時) (レス) id: be00a3fd43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：karin | 作成日時：2020年2月9日 20時
