一生分の恋を、あなたと【時透無一郎】

弐拾肆。 ページ25

【無一郎Side】

ご飯を食べていても、湯浴みをしていても、Aのことばかり考えてしまう。

泣いていた時の顔もあの時の笑顔も、ずっと僕の脳内を占領している。

あの顔を思い出すと心拍数が増える。それも、かなり急激に。

Aは今、何をしているのだろう。

煉獄さんに助けられたと言っていたけど、今も親交は深いのかな。

宇髄さんや甘露寺さんとも顔見知りみたいだけど、どういう関係なんだろう。

鬼殺隊に入る前から呼吸は使えたみたいだし、包丁でも技を出せるのはすごい。

それに、使用可能な呼吸が二つもあるのは珍しい。

……こうして見ると、Aはかなり謎だ。
僕はもっと、Aのことが知りたい。

「……なんで？」

なんでだろう。
Aのことばかり考えてしまうのも、Aが泣いていたら悲しいのも、笑っていたら嬉しいのも、どうしてなんだろう。

『ごめんなさい、私が弱いせいで。ごめんなさいっ……！』

泣かないでよ。
僕はずっと、Aに笑っていてほしい。

辛いなら、僕がそばにいるから。
絶対に悲しませたりしないから。

『……ありがとう。私、本当は誰かにそう言ってほしかったのかもしれない』

こんな小さなことで喜んでくれるなら、僕がAの生きる意味になりたい。

一人で生きるのは辛い。苦しい。

でも、二人なら怖くない。一人では無理でも、二人なら乗り越えていけるはずだ。

Aが他の誰かと一緒に生きるのは嫌だ。隣にいるのは僕がいい。

何度だって、伝える。
Aは僕の生きる意味だって。

だからもう二度と、死ねばよかったなんて言うのはやめてよ。

『無一郎くんに会えてよかった。ありがとう』

そんなの、僕の方が思ってる。

Aに会えてよかった。

Aが生きていてくれてよかった。

「……そうか、そういうことか」

自分の中で何かがピタリとはまった。

ずっと分からなかった行き場のない疑問が、収まるべきところに収まったような感覚だ。

Aの笑顔が好きなのも、悲しんでいたら僕まで悲しくなるのも、生きていてほしいと願うのも、全部そうだからだ。

僕は、Aのことが好きなんだ。


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大正コソコソ噂話

Aへの恋心を自覚してから、無一郎は鎹鴉を飛ばして安否の確認をしていたそうです。

「……よかった、無事だった」

Aのことをものすごく大切に思っているようで、怪我をしていると知るとめちゃくちゃ取り乱します。

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