弐拾壱。 ページ22
【無一郎Side】
『……くん、時透くん、聞こえてる?』
誰だろう。
知らない女の人が、僕を呼んでいる。
『ねぇ、起きて。……時透くん』
誰?
優しい声だ。
『――時透くん!』
「うわっ!……吃驚した。何?」
目を開くと、真正面に夜桜さんの顔があった。
『覚えてない?お風呂場でのぼせて倒れたんだって。女将の旦那さんがここまで運んでくれたんだよ』
「……へぇ」
そんな恥晒しをしたのか。
『目が覚めたなら心配ないかな。私、もう寝るね』
時計を見ると、お風呂場に向かった時間からは三時間も過ぎている。時間も遅いし、すぐにでも寝たかっただろうに。
僕の目が覚めるまで待っていてくれたんだ。
「……待って」
『?』
咄嗟に腕を掴むと、夜桜さんは驚いた顔で僕の顔を見た。
「僕は、霞柱の時透無一郎。趣味は紙切りと折り紙で、好きな食べ物はふろふき大根。歳は今年で十三。僕のことは下の名前で呼んでよ」
『……え?』
更に驚いた顔になった。
当然だ。
僕だって、自分がこんなことを言うなんて思わなかった。
『えっと……私は夜桜A。皆に認められたら十人目の柱になる。趣味は読書で好きな食べ物はわらび餅。私のことも名前で呼んで。……よろしくね、無一郎くん』
「!!」
今、笑った?
さっきの怒りを隠す笑顔とは違う、心からの笑顔。
ほんの一瞬だったけど、確かに笑っていた。
「僕、すぐに忘れちゃうけど、Aのことは絶対に忘れないようにする。だから、Aも僕のこと忘れないでね」
『別にいいんだけどね、呼び捨てでも。私、今年で十六なんだよ。一応無一郎くんよりも年上』
「え!?」
本気で驚いた。
年上だとは聞いていたけど、違っても一つか二つだろうと思っていた。
『……何か文句でもある?実年齢よりも幼く見られがちだけど、別に中身は子供じゃないからね』
Aは頬を膨らませ、ぷいとそっぽを向いた。何度も思うけど、十六には見えない。
「僕、Aは絶対柱になると思う」
『私も認めてもらえるように頑張るつもり。……ありがとね、無一郎くん。そう言ってもらえて嬉しい』
「Aが柱になったら、桜柱かな」
『そうかもね。……ふふ、楽しみだなあ』
また笑った。
さっきまで無表情だった分、その笑顔はあまりにも綺麗に見えた。
表情には出さないようにしつつも、口元が緩むのを抑えるので精一杯だった。
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わらび餅 - あおいさん» 本当に何回も、ありがとうございます!すっごく嬉しいです! (2020年3月6日 20時) (レス) id: eec3d5a46f (このIDを非表示/違反報告)
あおい - 題名、変わりましたね!とっても素敵です....!続きがめっちゃ気になります。次の更新も楽しみに待ってます! いつもの長文野郎より。 (2020年3月5日 21時) (レス) id: 4eed4f74a9 (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅 - 萌葱なごみさん» えええ……マジですか!?全然出てこないんですけど、もしかしてスマホのスペックが低いんしょうか……。何か他の読み方は知りませんか? (2020年3月1日 20時) (レス) id: eec3d5a46f (このIDを非表示/違反報告)
萌葱なごみ - しまと打って探せば出てきます! (2020年3月1日 18時) (レス) id: be00a3fd43 (このIDを非表示/違反報告)
萌葱なごみ - 嶼ですよ! (2020年3月1日 18時) (レス) id: be00a3fd43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:karin | 作成日時:2020年2月9日 20時