拾陸。 ページ17
「こんにちは。今日はよろしくお願いします」
『あ、ええ……。こちらこそ。それより、あなたの呼吸は?』
「風の呼吸です」
『そう』
初めての任務は、同期の隊士と合同だった。
目で盗んで呼吸を覚えられるなんて思ってはいないけど、戦い方の参考にはなるかもしれない。
「あの、君の名前は?」
『夜桜A。呼吸は花』
「そうですか……夜桜さん、頑張りましょう」
『そうだね』
駄目だ、初対面だと思うと緊張してしまって無愛想になる。
「……たっ、助けてくれえ!」
『鬼かもしれない、行くよ』
「え、もう行くんですか!?」
『悲鳴が聞こえたでしょ!?今行かないでいつ行くの。私たちは鬼殺隊なんだから、ちゃんと自覚を持って!』
この人は、自分が助ける側だという意識が足りていないのではないだろうか。鬼に殺されそうな人がいるかもしれないのに、ゆっくりなんてしていられない。
走ってみると、案の定鬼が人を襲っているところだった。
「うわ、大きい……」
『なに弱腰になってるの?早く攻撃しなきゃ』
「は、はい」
同期の男の人は深呼吸をし、風の呼吸で斬りかかった。
「風の呼吸 伍ノ型 木枯らし颪」
よく見て、目に焼き付けた。
力強く広範囲を斬りつける技だ。私の苦手な動きじゃない。
師範は呼吸を教えてくれないから、自分で覚えるしかないのだ。
――今なら、できる気がする。
花の呼吸でも音の呼吸でも、風の呼吸のでもない、私だけの技。
『桜の呼吸 壱ノ型 桜吹雪』
……できた。
あれ、もしかしてこれ、新しい呼吸?私、自分で作り出せちゃったの?
見ると、鬼はいつの間にか体が崩れている。
「夜桜さん、今の呼吸何ですか?初めて見ました」
『うん、私も初めて見た……。今作った呼吸だから』
「え!?」
「あの、助けてくださってありがとうございました!」
助けた男の人は、泣きながら私たちにお礼を言ってきた。
「妻が家の中に居たんです。身籠ってて、だから俺が守らないとって思って!でも、あんなの一瞬で倒すなんてすごいです。本当にありがとうございました!」
『……いいえ。奥さんもあなたも助かってよかった。赤ちゃん、無事に生まれるといいね』
「はい!」
……この仕事が好きだ。
たくさんの人の命を救える上に、こんな笑顔まで見れてしまうなんて。
「あの夜桜さん、これからお茶でも――」
『行かない。それより、もっと鍛錬したほうがいいと思うよ。死なないでね』
……多分、難しいと思うけど。
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わらび餅 - あおいさん» 本当に何回も、ありがとうございます!すっごく嬉しいです! (2020年3月6日 20時) (レス) id: eec3d5a46f (このIDを非表示/違反報告)
あおい - 題名、変わりましたね!とっても素敵です....!続きがめっちゃ気になります。次の更新も楽しみに待ってます! いつもの長文野郎より。 (2020年3月5日 21時) (レス) id: 4eed4f74a9 (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅 - 萌葱なごみさん» えええ……マジですか!?全然出てこないんですけど、もしかしてスマホのスペックが低いんしょうか……。何か他の読み方は知りませんか? (2020年3月1日 20時) (レス) id: eec3d5a46f (このIDを非表示/違反報告)
萌葱なごみ - しまと打って探せば出てきます! (2020年3月1日 18時) (レス) id: be00a3fd43 (このIDを非表示/違反報告)
萌葱なごみ - 嶼ですよ! (2020年3月1日 18時) (レス) id: be00a3fd43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:karin | 作成日時:2020年2月9日 20時