a mirage II 2【T】 ページ48
映画の上映時間までショッピングモールをぶらぶらしている途中、トイレから戻った私の視線がとらえたのは、私を待っている玉森くんと、見覚えのある後ろ姿。
「やっば!!今の人見た!?めっちゃくちゃカッコいいんだけどっ!!」
「黒いTシャツの人でしょ!?」
「やっぱ隣は彼女かなー。可愛いもんなー。いいなーあんなカッコいい彼氏ー。私も欲しー」
チラチラと玉森くんを振り返りながら私の方へ向かってくる女の子たちと、トイレへ続く通路前ですれ違う。
玉森くんの隣には、あの頃の彼女がいた。
笑い合う二人はとても絵になっていて、一瞬にして私をあの教室へと連れて行く 。
彼女が玉森くんに触れる。
玉森くんはちゃんとそこに居るんだって、あの懐かしい感覚が、久しぶりに蘇った。
「あ、来た来た。あんまり遅いから迷子になってるかと思ったよ」
「ごめんね、少し混んでて…、」
「ねぇ花村さん、なんかお腹空かない?」
「あ、うん、少し」
「間に合うよね」って、腕時計を確認しながら玉森くんはフードコートへ向かう。
ねぇ玉森くん知ってた?
玉森くんって
高校のころからすごくモテてたんだよ
ねぇ玉森くん気づいてる?
今日だって
何人もの女の子が玉森くんを見てること
ねぇ玉森くん、…私といて楽しい?
「花村さん?」
「あ、ごめっ、美味しいね」
「ついてるよ?ソース」
たこ焼きを付けた爪楊枝を紙船に戻して、すぐにティッシュを探す。
「ねぇ花村さん」
「ん?…あ、まだ他にもついてる!?」
「いや、ソースはとれてる」
「じゃあ、」
……何?
気になって気になってすごく聞きたいのに、私は玉森くんの言いかけた言葉の先を、聞き返すことができない。
「やっぱいーや。何でもない」
すると玉森くんは、「ちょっとトイレ」って、私を見ることなく席を立った。
.
映画の内容はほとんど頭に入ってこなかった。
ただ、ウジウジと自分に自信のない主人公にやたらとイライラした。
まるで自分の嫌なところをスクリーンで大々的に発表されているような気がして、目を瞑りたくなった。
帰り道、会話の糸口すら探せなくなっている私に、玉森くんは「少しだけ話さない?」と言ってくれた。
家のそばにある小さな公園のベンチに、並んで腰を落とす。
.
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作者名:ななは | 作成日時:2018年7月28日 1時