secret attic room 4【Y】 ページ46
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窓際に放ってあったカバンから、携帯と財布、自転車の鍵を見つけ出し、アイツからもぎ取った茶封筒と一緒に学ランのポケットへ突っ込む。
立ち上がり、何気なく窓越しに外を見下ろせば、寄り添い歩く二人の姿が目に入った。
喉元がキュッと、少しだけしまる。
" コイツ、ソイツ、アイツ、じゃなくてさ、たまにはAって呼んでやってよ "
…………A
太輔の特別を心の中で奪ってみたけど、借り物のそれは、手に入れられない時より虚しくて、泣きたいほど惨めだった。
ワザと嫌われるようなことをして、想われない自分につけてきた折り合いは、Aだけでなく、俺自身も傷つけてたんだ。
ゆっくりと、瞼を落とす。
「横尾くんっっっっ!!!!!!!」
は?
聞いたこともない大きな大きなAの声に。引き寄せられるように夢中で窓を開ける。
「横尾くんっ!!!!!あのっ、…………」
あーあ
だから言ったじゃん
優しくなんかしないって
「ありがとうっ」
絶対笑いかけたりなんてしないって
もしAが
俺に「ありがとう」なんて言ったら
もしAが
俺に笑いかけたりなんてしたら
俺は……
砕けるんじゃないかってほど強く、奥歯を噛み締めた。
二つのカバンを持った太輔が、華奢な肩を抱き寄せると、いくらか眉を下げて、小さく俺へ向かって手をあげる。
何度願っただろう
そこに立つ、自分を
無表情のまま目を背け、早くも遅くもないスピードで窓を閉めた。
この想い、少しだって宿す前に。
ごめん、
できるなら
ずっと嫌な奴でありたいんだ。
想いを隠した屋根裏へと続く埃だらけのハシゴを、思いっきり蹴り倒す。
この手で守れないのなら
いつまでも
その手に守られていて欲しいから。
少しだけ鼻の奥底がむず痒いのは、舞い落ちてきた埃のせいかもしれない。
【end】
a mirage II 1【T】→←secret attic room 3【Y】
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作者名:ななは | 作成日時:2018年7月28日 1時