secret attic room 3【Y】 ページ45
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「こういうのは元気な奴がやればいいんだよ。だからAも早く帰ってちゃんと寝ろよ?」
「でもっ……」
「いいから」
俺が触れることのない小さな頭を、ぽんっと撫でると、俺の方を振り返った太輔が言った。
「悪いけど渉、Aのこと送ってってやってくんない?」
太輔の放った異常な優しさは、教室を異様な空気で包みこんでいて、それに気づいてか、無残な姿のカーネルおじさん、もとい"うどいちゃん" を抱き上げておどける太輔。
「これやべーじゃん。縁起悪っ」
皮一枚で繋がった右手をワザと揺らせば、くすりと小さな笑いが溢れ、たちまち教室内は柔らかな空気へと変化をとげた。
山本たちは、バツ悪そうに反省の色をにじませている。
知ってたけど、分かってたけど、
俺が毎日のように連ねる想像は、バカげた夢物語に過ぎないんだって、今日はいくらか強めに思い知る。
あの日、あの時、あの瞬間、須藤Aがぶつかった相手がもし俺だったとしても、俺は太輔のようにはなれなかったし、太輔はコイツの唯一無二の存在になっただろう。
優しくなんかしない。
絶対笑いかけたりなんかしない。
だって
そんなんしてみろよ
もしコイツが
俺に「ありがとう」なんて言ったら
もしコイツが
俺に笑いかけたりなんてしたら
"なぁ渉ー、俺さぁ、近々Aに告ろうと思ってんだよね"
"…へぇ、いーんじゃん?別に俺には関係ねぇし"
"一応聞いとくけどさ…、渉、好き?"
"は?何を?"
"A"
"…まさか。むしろ嫌いなタイプ。ウジウジしてて見てるとイラつく "
"ははっ、ひでー言いようだなぁ"
俺はきっと、この想いの隠し場所を失う。
"でも、まぁ、……なら良かったわ。安心した"
こんな不必要なお荷物は、きったねぇ屋根裏がお似合いだ。
ちらりと須藤Aに目をやれば、不安げに眉を下げていた。
駅までの十五分間ネチネチ嫌味を言おう。
グチグチと正論もどきを突きつけよう。
「あんま太輔に迷惑かけんなよ」って、コイツが一番気にする言葉を投げかけてやろう。
体調を気づかったりなんかしない。
カバンもしっかり持たせてやる。
歩調だって緩めないし振り返ったりもしない。
思いつく悪事の全てを組み込んだ俺の計画は、
「………俺が行くよ」
俺の手によって破られた。
「太輔が送ってやれよ。後は全部俺がやる」
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作者名:ななは | 作成日時:2018年7月28日 1時