secret attic room 1【Y】 ページ43
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「あの…、横尾くん…」
一階、自動販売機前。
顧問に呼ばれ、体育教官室へ向かう太輔と別れた直後、たどたどしく俺の名を呼ぶのは、案の定須藤Aだ。
「太ちゃ、じゃなくて…、太輔くん、どこに行ったか、…知ってる?」
" 太ちゃんってガキかよ "
以前、感情に任せてぶつけた俺なんかの言葉を間に受け、言い直す彼女に心の中で舌打ちをした。
「知んない」
「じゃあ、あの…、今日、一緒に帰れないって、伝えてもらっても…、いいかな?携帯、忘れちゃ…」
「自分で言えば?」
続けるつもりだったであろう言葉をのみこみ、静かに姿を消す須藤Aを、視界の端の端でしっかりと捉えながらも、落ちてきた飲み物を取り出す指先にだけ神経を集中させた。
優しくなんかしない。
笑いかけたりしない。
唱えることを唱えられたかのように、二つの呪文を繰り返す。
" Aと付き合うことになったんだ "
二人が予想通りの未来へたどり着いたことを太輔から告げられた日、自身に課した決意は少しだって揺らぐことなく。
一年が過ぎた今、須藤Aのどこを切り取ったとしても金太郎飴のように同じ感情しか見つからないだろう。
横尾渉は嫌な奴。
立ち去る心細げな背を遠く見つめながら、飲みたくもないピンク色した紙パック、力いっぱい握りしめた。
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文化祭を明日に控え、騒然とした教室内。
人だかりの中心には、今にも泣き出しそうな須藤Aの上気した頬。
「あーあ、もう時間ねーじゃん。どーすんだよ。材料もねーし」
「すぐ行ってきます」
その小さな一言が耳に届いた瞬間、抑え込んでいた怒りにも似た感情が、俺を輪の中心へと向かわせた。
人並みをぬってたどり着いた先に転がっているのは、カーネルサンダースを真似てつくった担任の等身大マネキン。
笑顔を貼り付けたまま、箸を持つ右手はぷらんと揺れて、腰から真っ二つに折れている。
クラスの出し物であるうどん屋の看板おじさん、の残骸だ。
須藤Aの震える手に握られている茶封筒を乱暴に取り上げた。
「バカじゃねーの?」
なぁ、本当に自分が悪いと思ってんの?
俺にはそうは見えなかったけど。
どう考えたって、周りも見ないでふざけ合ってた山本と富樫が悪い。
「帰れよ」
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作者名:ななは | 作成日時:2018年7月28日 1時