fireworks 7【Ki】 ページ37
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「A?」
気がつけば散りきった花火の棒を持ち、燃え尽きたその先を見つめていた。
「あっ…、もう消えてたね」
三人でやるには少し多すぎる手持ち花火。
小さな水入りバケツにはもう何本か燃え尽きた花火が刺さっていて、まるで三人で過ごした時間の残骸みたい。
「体調悪りーの?」
「全然っ、元気だよ」
北山さんの訝しげな視線をかいくぐるようにして、新しい花火に手を伸ばした。
いつ切り出そう
なんて言い出そう
たくさんの感謝の気持ち、ちゃんと伝えられるかな……
「A!!!!!!」
突然、パチンと両頬に微かな痛みが走る。
添えられた北山さんの手のひらは、ふっくらとしていて、とても温かい。
「何泣いてんだよ!!!」
「…っ、え?」
「涙が出てなくたって、笑ってたって、Aが最近ずっと泣いてる事くらい、こっちは気づいてんだよ」
真剣な表情を誤魔化すことのない北山さんに見つめられたら、逸らすことなんてできない。
「まさかA、俺と別れようとか思ってんじゃねーだろーな」
答えられない私は、もう答えてるも同然で、そんな私を見て北山さんは「仲間はずれにすんなよな」って、淋しそうにつぶやいた。
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「いーか?よーーーく聞けよ?」
バラした花火から、"バツグンの長持ち!!"とうたっている一本を選び取り、北山さん自ら火をつけた。
「まず俺ならAより晴人を10センチ高く抱き上げるし、30分は長く抱っこできる!」
ぱしゅっと火がつけば、途端にぽっぽっぽっと、丸い小花が散りばめられる。
「俺の方がサッカーのパスも速いし、戦いごっこの悪役だってHP上がるから晴人も戦いがいがあるはず!」
華やいだ花火を見つめながら、
「男ってさぁ、意外とナイーブなわけ。いっくら優しいAでも、理解できないことってあると思うんだよなぁ〜」
ただ黙って、突然始まった北山さんのプレゼンのような語り口に静かに耳を傾け続けた。
「んでぇ、晴人が小学生になっても一緒に男湯入れるしぃ…、なんならエ ロ本の隠し方も教えられちゃうよ?」
あたたかく咲く火の花のように、華やかさの中にある丁寧で繊細で優しい北山さんの想いが、
「いいこといっぱいあるから。いいこと、たくさんにしていくから。だからさ……、」
暗闇を色づけ、滲ませていく。
「家族の仲間入りさせて下さい」
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作者名:ななは | 作成日時:2018年7月28日 1時