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「お兄ちゃん…？」
そう言うと、ぱっと顔を輝かせて
「そうや…A、会いたかった。」
と言った。
けどその後
「ごめんな、俺のせいで。」と、眉を下げて謝った。
私は、無言で首を振るだけ。
やって、完全にやないけど、覚えてるから。
この人は、兄は、家族のためにあんなに大好きで得意やった勉強も諦めた。
「私のことはええよ。
こうやって今も気にしてくれてた、それだけで十分。」
「…あほ。」
近くで見た兄は、少し涙ぐんでいた。
「お兄ちゃんと、福本さんはどういう関係…？？」
そう聞くと、驚いたことに、目を見開いたのは、福本さんではなく、兄の方だった。
福本さんは、先ほどから特に口数が少なく、かつ俯いていて、表情が見えない。
「福本さんって、なんやそれ…
A、本気で言っとんの？」
「え…お兄ちゃん？」
「まさか、福本と上手くいってない…？他にええやつができた
「福井くん、もおええから」
そう言って、兄の肩を掴み、言葉を止めさせた彼。
福本さん、それ以外の呼び方がわからないのだけど、その呼び方は違うと兄に言われ。
そう言えば、廉が１度この人の事、下の名前で呼んでいたなと必死になって思い出す。
「ええわけないやろ。お前は、あんなに勉強して、そんで里を出た。
すべてAのために。」
「里…？どういうこと…」
「もしかして、福本のこと、覚えてへんの…」
「福井くん！！」
そう大きな声を出したあと、首を振った彼。
これ以上は、話すな、ということだろうか。
それでも、ここまで来て、引き返すことなんてもう出来ない。
「お兄ちゃん、教えて。
私が忘れてること、全部。」
私はどうやら、重要なことをすっかり忘れてしまっていて、とても大きな間違いをしていたらしい。
それは、この２人の空気感で察した。
もしそれが、今からでも遅くないのなら
私はその宿命を受け入れたい、そう思ったのに
「お前が大好きやった『せーちゃん』は、今目の前におるこいつや。」
そう、確かに兄は言った。
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作者名：ゆう
| 作成日時：2017年9月6日 19時
