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「…うそ。」
だって、私の覚えてるせーちゃんは
優しくて、頼りになって、いつも人に囲まれてて、そんでもって、
私が危ない時、いつも助けてくれた…
それって…この前の時と、同じや。
「福本さんが、せーちゃん…、」
まだ信じられないけど、そう口にすると、兄は、「そうや。だいぶ雰囲気は変わったかもしれんけどな。」
そう言ったあとこう続けた。
「お節介すぎるところは変わってへんやろ？」
確かに、福本さんの第一印象は廉のこと構いすぎやと、お節介なくらいやな、そんな印象やった。
その時
「大晴、入るぞ。」
すっと音もせず襖が開き、入ってきた人物は、部屋の中を見て、目を見開いた。
「廉さん…
「なんで、Aが…」
久しぶりの廉は、少し髪が短くなってて、遊んでふらふらしてる感じはない。
いかにもデキる男って感じ。
それなのにこの人のこんな表情、初めて見たなと頭の片隅で思う。
相当驚くべきことやと思うのに、なぜこんなにも他人事にとれるのか。
それは、さっき彼が発した言葉。
「たい、せい…？」
福本さんの、下の名前は、たいせい。
「やから、せーちゃん？」
「そう。お前だけがそう呼んでた。みんなたいせい、とかたいちゃんって呼んでたのに、お前だけが。」
私の言うことに答えてくれるのは兄だけ。
理解が出来てない廉と、全く反応しない福本さんこと、せーちゃんを置いて、私は話し続ける。
「なんで、言ってくれへんかったんですか…
それやのに、なんで、私のこと、気にかけてくれてるんですか…！」
「忘れられる、わけなんてないやろ。」
聞き間違えかと思った。
それほどに、今までと声色も口調も違ってて。
「なら、ほんまの事言ってたら信じてくれた…？
違うやつのこと、『せーちゃん』って呼ぶAに、俺がせーちゃんやって言っても、信じてくれた？」
今まで見たことなかった、今にも消えてしまいそうな顔をした、確かにせーちゃんがそこにいた。
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作者名：ゆう
| 作成日時：2017年9月6日 19時
