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「ここなら落ち着けるかしら。座りなさい」
ゼロ様の私室はあまり物のない場所でした。椅子が二脚、机が一つ。壁には戸棚が一つきり。机には開封されたワインボトルと、一塊のチーズだけ。ワイングラスはありません。
ゼロ様に促されて着席。ゼロ様はワインボトルに直接口をつけ、ワインを飲みます。
注意をしようかと思いましたが、したところでゼロ様が聞いてくださるか分かりません。ワインの後は大きな口でチーズを二口食べて、それで満足なさったのでしょうか。ようやく口を開いてくださいました。
「まず、ローア家の犯した罪は……いえ、罪を犯したのは私の父、チューベよ。チューベの罪について、私の知っている限りを話すわ」
「チューベ様、ですか?」
私は登城した際にご挨拶したチューベ様を思い出します。高貴で妖艶な美貌のチューベ様。そのようなチューベ様が、どんな罪を犯したのでしょうか?
「あ、予め言っておくけれど……聞くからには、もちろんそれ相応の覚悟は持っているわよね?」
「……。私はもはやあなた様の従者ですので。罪を告発せよという命令のためなら、何でもいたします」
するとゼロ様は少し目を丸くします。
「驚いたわ。噂には聞いていたけれど、ゴドディン家の従者って皆そうなの?それとも口だけ?まあどちらでも良いわ、言質はとれたし」
こほん、と、ゼロ様は軽く咳払いをします。それからんん、と唸ります。眉間に皺を寄せて、指を這わせて。どう話そうか考えているようです。
やがて、思考がまとまったのでしょうか、ゼロ様は私の方をまっすぐ向いて、口を開きました。
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