検索窓
今日:8 hit、昨日:0 hit、合計:3,670 hit

58 ページ9

「ここなら落ち着けるかしら。座りなさい」

 ゼロ様の私室はあまり物のない場所でした。椅子が二脚、机が一つ。壁には戸棚が一つきり。机には開封されたワインボトルと、一塊のチーズだけ。ワイングラスはありません。

 ゼロ様に促されて着席。ゼロ様はワインボトルに直接口をつけ、ワインを飲みます。

 注意をしようかと思いましたが、したところでゼロ様が聞いてくださるか分かりません。ワインの後は大きな口でチーズを二口食べて、それで満足なさったのでしょうか。ようやく口を開いてくださいました。

「まず、ローア家の犯した罪は……いえ、罪を犯したのは私の父、チューベよ。チューベの罪について、私の知っている限りを話すわ」

「チューベ様、ですか?」

 私は登城した際にご挨拶したチューベ様を思い出します。高貴で妖艶な美貌のチューベ様。そのようなチューベ様が、どんな罪を犯したのでしょうか?

「あ、予め言っておくけれど……聞くからには、もちろんそれ相応の覚悟は持っているわよね?」

「……。私はもはやあなた様の従者ですので。罪を告発せよという命令のためなら、何でもいたします」

 するとゼロ様は少し目を丸くします。

「驚いたわ。噂には聞いていたけれど、ゴドディン家の従者って皆そうなの?それとも口だけ?まあどちらでも良いわ、言質はとれたし」

 こほん、と、ゼロ様は軽く咳払いをします。それからんん、と唸ります。眉間に皺を寄せて、指を這わせて。どう話そうか考えているようです。

 やがて、思考がまとまったのでしょうか、ゼロ様は私の方をまっすぐ向いて、口を開きました。

59→←57



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 6.1/10 (7 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
4人がお気に入り
オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ミクミキ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年5月16日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。