ロレッタの杞憂 ページ46
ロレッタは馬車に揺られていた。御者は一言も喋らない男で、生気がなかった。
「……あの子、無事だと良いんだけど」
幼いながらにも従者として奉公するというオリヴィアが気がかりだったのだ。というのも、オリヴィアの使い魔という蝶が、様子がやけにおかしかったのである。何かにひどく怯えているような、焦っているような感じがした。しかしそれ以上に、オリヴィアが危ないと訴えていた。
オリヴィアの向かったローア家にはあまり良い噂がなかったが、ロレッタはローア家のガリオンが気になっていた。というのも、ガリオンは海賊なのではないかという噂があったのだ。後にこの噂はデマであると分かったが、こういった噂が出るほどガリオンは不審だった。
馬車がたどり着いたのは小さな村だった。……いや、かつて小さな村だったであろう場所、だった。建物はいくつかあるのだが、人気がない。
グリムの村はここのはずだ。……廃村になったなんて聞いていない。少ないながらも村人はいると聞いていたのだが……。
いや。よく見れば、つい最近まで人が住んでいたような痕跡がある。
「村人がある日を境に一斉にいなくなった……?」
そんな馬鹿な、と呟く。
「……ともかく、邸宅に行かないと。ええと、こっちで合ってるのかな」
村の様子は明らかに尋常ではない。オリヴィアは無事なのだろうか。胸騒ぎがして、ロレッタは急いだ。
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