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「……」

 息を潜めて、なるべく静かにします。前に実験棟に来た時の事を思い出していました。音だけしか聞こえませんでしたが、確かにここには何かがいます。それが何なのかは分かりませんが、少なくとも友好的な存在ではないでしょう。ゼロ様が扉を氷漬けにしてまで封じ込めようとしたものですから。

 あの縄梯子も、恐らくゼロ様が切ったものでしょう。箒など空を飛ぶための技術がなければ、ここからは逃げられないでしょう。

 ただ、ゼロ様がどこに行ったのかは分かりません。縄梯子を切るだけならここまで時間がかかるわけが……。

「……あ」

 いえ、もしかするとこうなのかもしれません。

 ゼロ様は縄梯子を切った後、怪物に襲われたのかも。暗い中で襲われたら、いくらゼロ様でも対処は難しいはずです。

 あるいは、縄梯子を切った後にここへ転落してしまったのかもしれません。もしその時に箒が上に取り残されてしまったり、あるいは一緒に落ちて折れてしまっていたら……ゼロ様はここから出られない。氷が溶けるのを待つ事はできるかもしれませんが、あの氷の分厚さです。溶けきる前にここにいる何かに襲われるか、餓死するかのどちらかです。

 どちらかなのかは縄梯子の下を見れば分かるはず。私は周囲を警戒しながら、ゆっくりと縄梯子の真下へ近付きました。

「……!」

 そこには切れた縄梯子、比較的新しい血の痕と……折れた箒がありました。

 恐らくゼロ様は足を滑らせたのでしょう。その際に箒まで折れてしまった。縄梯子も切れているから、帰る事もできない。

 早く、早くゼロ様を見つけないと。

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作者名:ミクミキ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年5月16日 17時

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