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そのプロセスを何度か繰り返して、実験棟への扉は完全に氷に沈みました。氷のせいで階段は凍えてしまいそうなほどに冷たいです。心なしか、ただでさえ白すぎるゼロ様の肌が更に青白く透き通って、生気がないかのようですらあります。いえ、もともとないようなものなのですけど……。
実験棟への出入り口を塞いで、ゼロ様はふぅとため息をつきます。ここはこんなにも寒いのに、その額には玉のような汗が浮き出ていました。
「一旦戻りましょうか。これでしばらくは安全な筈よ」
ゼロ様は私の手を引いて帰ります……ゼロ様は扉の向こうに何を見たのでしょうか。確かにあれだけの何か怪物のようなよく分からないものがいたら出入り口を塞ぎたくなるのは分かりますけど、だとしても他に方法はなかったのでしょうか。ゼロ様のあれはどちらかというと封印のようにも見えました。
「オリヴィア、悪いのだけどお願いしても良い？」
地下一階から上へと向かうエレベーターの中で、ゼロ様がそうおっしゃいます。
「はい、いかがなさいましたか？」
「休憩をした後で良いの。箒を二本か三本、本邸から盗んできてくれる？」
「かしこまりまし、た……？」
え、今なんと。ほとんど反射的に返事をしてしまいましたが、え、箒を本邸から盗んでこいと？
「私は少し調べものがあるの。溶ける事はないと思うけど、万が一のためにあの氷もいちおう見張らないといけないし……それに、私は警戒されているからここを抜けられないし」
箒を何のために使うのか聞きたかったのですが、その時エレベーターの扉が開きます。ゼロ様は足早に外へ出て、部屋に駆け込んでしまいました。
あそこは何の部屋だったかしら……確か、書斎だったような気がします。魔法薬学だとか、経済学とか、歴史書とか、様々な分野の本が本棚に納められていたのを覚えています。だって、本に積み重なった埃を掃除したのは私ですもの。
「……盗まないといけないのかぁ」
ゼロ様からの言い付けです。やらないといけません。嫌な予感はしますけど……捕まったらどう言い訳すれば良いのでしょうか。今のうちに考えておきましょう。
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