78 ページ29
扉の向こうは大きな広間でした。中央には螺旋階段があります。かなりの高さがありますね。天井からは地上からのものでしょうか、明かりが降り注いでいます。もっとも、それはひどく弱いもので、広間の中央の螺旋階段を照らすくらいしかできていません。
建築系としては、バロック？装飾の少ないロココ調にも見えます。優美で、でもどこか冷たい感じ。繊細な意匠が施されていて、いかにも貴族的な様子でした。
扉のすぐそばに、車椅子に座った白骨死体。先程の問答は誰のものなのか……考えない方が良さそう。
今いるここを一階とすると、二階、三階、四階があるようです。螺旋階段のところどころに、渡り廊下があって、どうやらそこから上の階に行けるようでした。
さて、どうしたものか。この場所……実験棟は相当広いみたいです。全て調べるとなると、かなりの時間がかかりそう。今日は一階だけ調べてから帰ろうか……いえ、一階の全てを調べる事も難しいでしょう。半分くらいしか調べる事はできなさそう。
「…………」
「……ん？」
暗いその空間を魔法で照らしながらそう考えていると、どこか遠くから何か声がしたような気がしました。誰かが唸るような音です。何？警戒して耳を澄ませると、次の瞬間、足音がしました。凄まじい勢いでこちらに迫る足音が、たくさん！
「ひっ？！」
咄嗟に扉に戻って閉めて、距離を取ります。扉ががんがんと叩かれる音。かなりの力で叩かれているのでしょう、扉の蝶番は今にも壊れてしまいそうでした。元々錆び付いて脆くなっていたからかもしれませんが、それにしたって、明らかに人外じみています。
このままでは扉が壊されるのも時間の問題です。私は震えている足を必死に動かして、来た道を戻ります。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
