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「……そんな事があったのね」
ゼロ様はベッドに横たわっていました。顔色はあまりよろしくございません。青ざめていて、青白い。口からは何か赤いものが滴っていますが、それはきっとワインではないのでしょう。
「ごめんなさい、思い出してしまいそうなの。頭が痛いのよ……思い出したくないものを思い出してしまいそうで……気が触れてしまいそうなの。もう少し、もう少しだけ時間をちょうだい……」
「かしこまりました。では、引き続き探索を行います。何かありましたら報告いたしますので……ご主人様、どうかお身体に気を付けてくださいませ」
「ええ。でも、六時までには戻ってきてちょうだい。夕食もとらないといけないから」
「かしこまりました」
ゼロ様への報告を終えたら、次はロレッタ様への報告です。……書いても信じてもらえそうにございませんが、正直に書くべきでしょう。カメラでも持ってきたら良かった。
「ミザリー、これをロレッタ様に届けてくれないかい？」
分かったわ。でも、一人で大丈夫なの？ミザリーは不安げに羽を揺らめかせます。
「大丈夫だよ。さあ、早く行っておくれ」
はいはい。死んだりすんじゃないわよ。彼はふわふわと窓を潜り抜けて、飛んで行きます。私は彼が空の青に消えるまで眺めました。それを終えると、早速地下二階へ向かいます。
ふと、何となく気になって、収容室のお嬢様達の服を見ました。ゼロ様達の着ている白の装束とは色違いの、黒の装束です。収容室の見た目のせいか、その装束はなんだか病人の服に見えました。
突き当たりの扉を開けます。多分、この階段の先は、実験棟、なのでしょう。何があるか分かりません。気を引き締めていかないと。
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