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降りた先は、地下一階と比べてもかなり埃っぽい場所でした。剥き出しの煉瓦の廊下。どこからか、いやに生臭い匂いもしました。
「……んん」
「どうしましたか、ご主人様?」
ゼロ様が少しつらそうに頭をかかえました。頭が痛いのでしょうか?呼吸も荒いですし、顔色も真っ青。額には大量の汗が浮かんでいます。明らかに状態がおかしい。
「何だか少し頭痛がするわ。何かを忘れている気がするの。とても大切な何かを……」
「無理はするべきではありません。一度、上へ戻りましょう。探索は私一人でも行えますから、ご安心をば」
「一人で探索するの?大丈夫?」
「私にはミザリーがいますので……ね?ミザリー、良いだろう?」
仕方ないわねぇ、もちろんよ。ミザリーは私のそばを離れないように、ふわふわと浮遊しています。
「そう……じゃあ頼んだわ。私は自室に戻るから。何かあったら来てね」
「お供いたしましょうか?」
「ふふ、ありがとう。でも一人で行けるわ、オリヴィアは心配しすぎよ」
ゼロ様は安心させるためにでしょうか、微笑みます。しかしその様は痛々しく、よろめきながら上へと戻っていかれました。
私はミザリーを頭に乗せて、廊下を歩き……ふと、初対面の時のブリジット様の言葉を思い出しました。
下の研究室の姉妹は危険、と。ブリジット様はこの地下二階の存在を知っていたのでしょうか?あの時ゼロ様は何事もないようにスルーしていましたが。
もしかして、ゼロ様が忘れている気がするというのは、この地下二階の事なのでしょうか?確かゼロ様は、施術の途中で逃げた、と言っていましたし。中途半端に記憶が消されている可能性もありますね。
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