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「……来てみたは良いけど、埃臭いだけね。それに気味が悪い」
ゼロ様は物置部屋に来て、軽く顔を歪めました。ゼロ様はどうも、この部屋があまり好きではないようです。確かに、この部屋は居心地の良いところとはとても思えませんし。
「メモ書きには、どこかの近くにメモを置いておけ、とありましたが……やはりこれでしょうか?」
一文字だけ『H』と書いてあるそのメモを手に取り眺めます。それらしいものはこれの他にないのです。おそらくあれはドアの近く、と書いてあったのではないかと思うのですが。
「そうよねぇ。でも、いったい……きゃっ?!」
と、突然ゼロ様がよろめきました。どうやらでこぼことした床に躓いてしまったようです。ゼロ様はそのままバランスを崩し、壁にかけられた絵画の一つにぶつかってしまいました。
がちゃんと大きな音がして、そしてゼロ様が尻餅をつく音。
「ご主人様、お怪我はございませんか?」
手を差し出すとゼロ様はそれを掴み、ゆっくり起き上がりました。
「大丈夫よ、ちょっと転んだだけ……って、あら?」
起き上がったゼロ様が、絵の方を見て少し不思議そうな顔をしました。
「どうかなさいましたか?」
「この絵、こんなだったかしら?」
絵?私は杖の先を絵の方へ向けて、確認をしてみます。
ゼロ様がぶつかったのは中央の絵画でした。確か、この絵画には……湖の底の骸骨が描いてあったはずでした。けれど、今は違います。そこに描かれていたのは、湖の畔の木で首を吊る男性。
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