20話 ページ21
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私たちを隔てていた障害物は、私が蹴り飛ばしたことによりドアノブは外れて真ん中が凹んだ、歪な形になっていた。
その奥に見える、私の恋焦がれる人。
隣に居たいと、貴方のためになりたいと、私の全てを懸けてでも幸せにしたいと思った人は、酷く吃驚した様子で呆然と私を見つめている。
｢……な、にしてるんだ｣
｢扉開けただけだけど｣
｢だからって壊さなくても、｣
｢お前、もう開ける気なかったろ｣
私の言葉に、｢…開ける必要もないからね｣と返す夏油の表情は、言葉とは裏腹に悲愴に満ちたもので。
ごめん。そんな顔をさせて、ごめん。
心の中にそんな懺悔をぶら下げながら、俯いたままの夏油の前に跪いた。
｢ATMなんか要らねぇんだよ｣
必要ない、そんなもの。
｢……分かってる。だからもうその話は、｣
｢そんな金下ろすだけの機械に成り下がらなくたって、私の隣にいる理由はあんだろ｣
遮られた言葉に漸く顔を上げた男は、私の言葉の真意が分からないのだろう。ただ固唾を飲んで私の続きを待っている。
その瞳に映るのは、困惑と、ほんの少しの期待。
なぁ、夏油。私の隣に立つ理由を、お前はもう手に入れてるんだよ。
｢お前が私を好きで、私もお前が好き。理由なんて、それで十分だっつーの｣
それ以上の理由なんて、必要ねぇんだよ。
こぼれ落ちそうなほど目を丸くした夏油は、はくはくと声にならない息を口から吐き出している。
｢…え、まってくれ、いま、君、｣
｢待たない。今まで散々待たせて申し訳が立たねぇからな。倍速でいってやんよ｣
｢いや、ちょ、っ、まっ……！｣
焦る夏油の頬を、優しく、それでいて逃げられないように強く包む。
そのまま顔を寄せれば、見開かれた瞳に私の顔が写った。
その顔は、自分でも見た事がない程の幸福に満ちていて。
向けられた真っ直ぐな愛も、どこか歪みを持った執着も、熱い視線も、本能的な欲望も、その全部を飲み込むように彼の唇に自身のそれを重ね合わせた。
たとえこの先に待ち受けているのが地獄だったとしても、誓うよ。
｢絶対にお前を幸せにする｣
だからさ。
｢だからお前も、私に愛される覚悟を決めろ｣
私から向けられた呪いの言葉に、目の前の愛しい男は顔を真っ赤に染めて頷いた。
完
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らぅ(プロフ) - 夢主イケメンすぎwww最高ですwww (8月8日 8時) (
レス) @page23 id: f9b0273b6d (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - お友達のイラストもよわよわな夏油もつよつよの主人公も大好きでしたありがとうございました (2022年3月8日 3時) (レス) @page24 id: 3c352c4c7a (このIDを非表示/違反報告)
nana(プロフ) - 夢主ちゃんすごいかっこよかった！！これは惚れちゃうね！私も惚れました！ありがとうございます！！ (2022年1月17日 3時) (レス) @page22 id: 7f38ffe42c (このIDを非表示/違反報告)
お茶ん(プロフ) - チョット待って夏油サイコーすぎるWWW 五条に絶対普通に告った後のアピール用に金持ちラブ情報与えたのに、告る時点でのATMはもうネタじゃんWWW わらび餅さんサイコーですWWW (2021年8月30日 22時) (レス) id: f8c5dcff4c (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅。(プロフ) - あいりさん» あいりさんありがとうございます〜！夏油が惚れるのもわかる！と思っていただけるようなキャラにしたかったので、好きになってもらえてとっても嬉しいです〜！読んでくださってありがとうございました！ (2021年7月22日 20時) (レス) id: b794bc2212 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わらび餅。
| 作成日時：2021年3月6日 17時
