【呪術廻戦】最凶呪術師は最凶ルートを回避したい

23話 ページ25

【夏油side】




「あはは！もう終わり〜？ていうか、本当にあれが1番強いやつだったんだねえ」



相手の操る呪霊に突き飛ばされ、大木に打ち付けられた体が悲鳴をあげた。

これ、肋何本かイッたな。


「…っ、私の真似ばかりだね」


「んー？だってその方が、精神的屈辱じゃない？」


「…もしかして君、御手洗先輩の術式はコピーできないのかな」


私の煽り言葉に、「術式はそもそもコピーできないよ」となんて事ないように返される。
少しは動揺するかと思ったのに、あてが外れたな。




「あ、もしかして今ので僕が動揺すると思った？」



「残念だったね〜！」と愉しそうに笑うソイツに腹が立つも、手持ちの呪霊はほぼない。
そんなことは、あいつも私の記憶を覗いているだろうからバレているはず。


つまり、もう打つ手がないということだ。



「さて、言い残すことはある？｣


「……御手洗先輩はどうした｣


「あー、多分森の中を迷ってるよ、僕の術式で」



「君を殺したらあの女も殺すよ」とにこやかに告げた特級に、「あの人はそんな簡単にやられるタマじゃないさ」と最後の虚勢を張る。

それにしても。


「ずっと先輩の姿で戦ってくるのは、私への嫌がらせかな｣


「そ！味方に殺される君の顔が見たくて｣



悪趣味な奴だな、と思わずため息をつく。
正直な話、御手洗先輩の姿で殺されても何も感じない。
あの人は私のことが嫌いだから。私も、あの人のことが嫌いだから。


いや、違うな。



「……御手洗先輩に伝えてくれるかい？」



立っていることもできず、ずるりと後ろにあった木にもたれ掛かるように座る。
上機嫌そうな目の前の呪霊に、一言。


「こんな弱い呪霊に負けないでください、ってね」


「……今すぐ殺してあげる、お前みたいな弱者は｣



御手洗先輩を、信じる。

こんな高慢なやつに、負けるような人ではないと。
後輩の死体を見て、憤れる人であると。
たとえそれが、自分の嫌いな後輩であったとしても、仇を取ってくれると。

あの人が私を嫌っていても、私はあの人を嫌いになれないんだな。
だってこんなにも、信じてしまっているから。


目を閉じた私の元に、最初に放った呪霊の気配が近づく。

これで、おわり。


あとはきっと、御手洗先輩がどうにかしてくれるから。








｢……おいおい、私はもっと美人だろうが。ちゃんと忠実に再現しろよ｣


雷鳴がひとつ、轟いた。

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