【呪術廻戦】最凶呪術師は最凶ルートを回避したい

22話 ページ24

【夏油side】




「どうした？」


きょとん、とした顔を向けてくる御手洗先輩から一気に距離をとる。

おかしい。

あの人は、私のことを名前で呼ぶわけが無い。
名前で呼んでいるのは、硝子だけ。


嫌われてる自分が、呼ばれるはずがないのだ。



「………お前、何者だ」



纏う空気が変わる。ピリッとした突き刺すようなそれに、背筋がぞくりとした。



「あーあ、バレちゃったか。なんで分かったの？完璧だと思ったんだけどなあ」


見た目と声は先輩そのものだが、途端に放たれた凄まじい呪力と禍々しい雰囲気に持っていかれそうになる。



＿＿＿＿＿＿勝てない。


直感的にそう思った。
自身の力が足りないことなど、分かっていたことではあるが、こうもまざまざと力量差を見せつけられるとどうにも足がすくんでしまう。


手持ちで1番呪力を持った呪霊を放つも、勝算はない。

相手の術式も今のところ分かっているのは、別人になりすませるということ。
まさかそれだけで特級になれるということはないだろう。


「それ、結構強いね。もしかして、僕に勝とうとしてる？」


「まぁね。私にも矜恃というものがあるんだ｣


「あはは！足震わせてるくせによく言うよ！」



愉快そうに笑う特級を目掛けて呪霊を向かわせるが、相手はヒラヒラと軽く交わして、木の上に降り立った。



「僕の術式、知りたい？」


「……いや？興味無いな」



私の答えなんて無かったかのように、「僕の術式はね、結構面白いんだよ」とにこやかに話し出すあたりに性格が出ている。
人の話を聞かないところと、桁違いの呪力量は悟に似ている。すごく。

いや、悟と戦うようなものだな、これ。



「僕の術式はね、視界に入れた人間の記憶にあるものを構築できるんだ」





人間には、必ず記憶が存在する。


例え覚えていなくても、視界に入った雑草、雲の形、その辺のコンクリート。
そして極めつけは。



「もちろん呪霊も、ね？｣




先程放った1級呪霊が、3匹に増えた。
しかし、私のものとは違い、そいつらはこちらに向かって呪力を飛ばしてくる。


コイツの術式は、"相手の記憶にあるものを構築できる"
つまり、今この場に放っていない呪霊も、複製して手持ちにすることが可能。私の術式を、私以上に使えるということだ。



＿＿＿＿＿＿天敵。



「さ、もうちょっと楽しませてよ」

「……言われなくとも」

23話→←21話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す