【呪術廻戦】最凶呪術師は最凶ルートを回避したい

21話 ページ23

【夏油side】


御手洗先輩との合同任務。

正直何故こんな奴と、というのが本音ではあるが、特級術師と言われるだけあってその実力は折り紙付き。

まぁ、悟の無下限を破ったくらいだし、並の術師ではないことくらい私にだって分かっていた。


だけど。


『私はお前の考えが嫌いだ。だから宜しくしない。残念だったな。』


『吐き気を催しそうな考えだ』


『何も分かってねぇ馬鹿の考え』


いくら私でも、自分の信条をここまでコケにされたら、彼女にプラスな感情を抱くことなんてできない。
当たり前だろう、私だって人間なんだから。


呪術師は非術師を守るのが当たり前。弱者生存。強い者が弱い者を助けるこそ正義。

その考えを真っ向から否定してきた彼女は、何を理由に呪術師をやっているのか。
はたまた、悟のように「力に理由や責任を乗っけんのこそ弱者」とでも思っているのか。



それはもう、御手洗Aにしか分からない。


私がわかることは、彼女は私とは反りが合わない。それだけだ。



「しかし特級か……正直1人では気が重いな…」



御手洗先輩が補助監督に呼ばれて15分。
ただ帳を張り直すだけなのに、15分だ。

あのレベルの呪術師になれば、一般人を入れないための帳を下ろすのに1分もかからないだろうに。


つまり、御手洗先輩は呪霊と戦っているか妨害されているかの2択なわけで。


「…呪霊の気配は消えないから後者か」



前者の方が、ハッキリ言って有難い。
特段命を大事にしたいだとかそんなことを言うつもりは無いが、自身の力が特級に及ばないことは明白。
それならば、御手洗先輩が相手をしてくれた方が確実である。

もし彼女が死んだとしても、私からすれば気にする事はない。だって私は彼女が嫌いなわけだし。


何より、彼女がやられたなら、こちらに勝ち目はない。それなら諦めがつくものだ。



「…このあたり、な気がするんだけどね｣


「おい、無事か？」


「っ！」



後ろから掛けられた声に思わずビクリ、と肩を揺らしてしまった。
その様子を見た彼女は、「無事だな、良かったよ」とくつくつと笑う。



「随分長かったですね」


「あー…子供が泣き止まなくてな」



確かに、この人が相手じゃ泣くのも仕方ないな。
悟を凌駕するほどのガラの悪さだ。

御手洗先輩は私の前に出て、呪霊の居場所に心当たりがあるのか、どこかへ向かおうとする。





「ほら、とっとと行くぞ。傑」




「………は？」



あの人は、私を。

＿＿＿＿＿＿傑、と呼んでいたか？

22話→←20話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す