part nine 保健室で３ ページ14
しんと静まる保健室の中。聞こえてくるのは上の教室や廊下から聞こえるはしゃぐ子達の声。
私が言えずに黙っている中、それでも壱松先生は怒らずに呆れずにただずっと私を待ってくれた。
そうして、私は勇気を出してそっと声を絞り出した。
貴「私、が飛ばなかったら、カラ松さんがせっかく守ってくれてるのに、悪いと、思って…」
壱松先生「カラ松って、さっき喧嘩してた方の片方？結構綺麗な。」
貴「はい、私、もともと運動、ダメダメで。だから本当はものすごく怖かったんです。でも、周りの子達に急かされてどんどん怖くなってきちゃって。…それでも唯一私を守ってくれたカラ松さん。こんな私にも優しくしてくれた。でもなんだか守られてばかりでそんな自分が情けなく思えてきちゃったんです。…それで勢いよく飛んだら、こんな感じに…」
私は一通り話すとココアを一口すすった。
壱松先生はそっか、と一言いうと同じく珈琲に口を付けた。
すると突然キーンコーンカーンコーンと学校のチャイムが鳴った。
貴「あっ…！チャイムなっちゃった！？す、すみません長居しちゃって。それじゃあありがとうございまし、」
壱松先生「いいよいいよ。大丈夫だよ。もうちょっといなよ」
貴「え、で、でも」
壱松先生「大丈夫、少しくらいさぼっちゃいなよ。少し休みなって。」
私はどうしようかふらふらと体を迷わせたが、またしっかりと椅子に腰かけた。
壱松先生「…運動苦手なんだ？」
貴「は、はい…」
壱松先生「僕も苦手。体力無いし。運動音痴だし。だから体育の話をするクソ松みるとぶん殴りたくなるし。いやまあ体育教師なんだけど。」
壱松先生は自分で言ったことを鼻で笑うと、優しい顔でこちらを見た。
壱松先生「確かに僕もよく小さい頃はあいつに守られてた。それでよく自分が情けないって思ってたことが多かったさ。…でもさ、今になって少しはあいつに守られるってことは少なくなってきたんだ。ちょっとずつ。…梅原、さんだっけ？」
貴「は、はい」
壱松先生「梅原さんもいつか誰かに守られなくてもちゃんと一人でどうにかできるようになるよ。それに意外とそのカラ松も仕方なく梅原さんを守ってるわけじゃないと思うんだ。喧嘩の時、心からの怒りっぽかったし。大丈夫。気にしない気にしない。」
壱松先生はまた、一口珈琲を飲むと、口を開いた。
壱松先生「また辛くなったりしたらいつでもおいでよ。良いことは言えないと思うけど、話なら聞いてやれるから。」
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作者名：蘭子さん | 作成日時：2017年11月28日 12時
