part nine 保健室で2 ページ13
壱松先生は戸棚の方へ行くと消毒と包帯と湿布を取り出してこっちに戻ってきた。
そうして「ジャージ、すこし膝まで上げて」と言われ、私は言うとおりに膝まで上げた。そうすると手慣れた手つきで傷の手当てをした。
湿布を貼り、包帯を巻き終えると、壱松先生はふぅとまた一つ溜息を吐いた。
壱松先生「はい、おしまい。」
貴「あ、ありがとうございます。」
私はぺこりと頭を下げると立ち上がろうとした。でも壱松先生に止められた。
壱松先生「あぁ、ちょっと待って。ちょっとお話したいことあるから。少し座って。」
壱松先生は机を挟んでおいてある椅子の片方をずるずると引いてこっちおいでと手招きをした。
私は壁に手を当て、そっちの方へゆっくり歩いていく。ちょうど壁がなくなったところで壱松先生は私に手を貸してくれてそのまま椅子に座ることが出来た。
壱松先生「ココアと珈琲。どっちが好き?」
貴「へ?え、あ。ココアで」
壱松先生はマグコップを一つ取り出すとそこにココアの粉を入れ、お湯を注いだ。そして先程自分で使っていたであろうマグカップをデスクの上から持ってくると珈琲の粉を入れてお湯を注ぎ、牛乳と砂糖を入れた。
スプーンでかき混ぜながら、ココアの入った方を私に渡してくれた。私はお礼を一つ言うとふぅふぅとしてココアに口を付けた。
壱松先生「んで、お話についてなんだけどね。」
壱松先生は肘を机につくと私をじっと見てきた。
私はその視線に気づくとそっとマグカップを置いて、先生の方を見た。
貴「は、はい。お話って…?」
壱松先生「うん、あのささっき実は僕見てたんだよね。体育の授業」
貴「へっ、そ、そうなんですか!?」
つまりさっきのクソださい転び方してたのも見られたの!?顔がみるみる熱くなる。
壱松先生「うん、てかまだハードルなんてあるんだね。ほんと無くなればいいのにねあんな競技。そもそも体育なんて授業さえなくなってしまえばいい。体育にいい思い出なんてひとつもない…!!!」
さきほどの優しい雰囲気はどこへ行ったのか、壱松先生は闇のオーラを放っていた。気持ちはわかるけども…。
壱松先生「あ、ああ。で、話戻るけどさ。あの時ハードル飛び越えようとして転んだ時。あれってなんでわざわざ飛ぼうとしたの?ずっと止まってたのに。」
壱松先生は不思議そうに首を傾げる。
私はいいずらくて俯く。
壱松先生「嫌なら話さなくても大丈夫だけど、これで話して胸が少しでも楽になるなら話してほしい」
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作者名:蘭子さん | 作成日時:2017年11月28日 12時