episode10 ページ34
(白布 side)
本当、つくづく思う。
父さんは、和真によく似ていると。
白布「俺、好きな人がいるんだ」
顔を真っ赤に染め、唇を震わせながらそう言えば、父さんは目を点にして俺を見つめた。
てん、てん、てん、とリビングに沈黙が走り、ソファでテレビを見ながらアイスキャンディーを食べている兄貴が俺を横目でチラと見る。
ゴクリ、と俺は喉仏を上下に揺らして唾を飲み込むと、父さんは突然「プッ」と吹き出し、ふんぞり返ってゲラゲラと笑い始めた。
「お父さん!」
隣に座っていた母さんが頭に角を生やして父さんに怒鳴るけれど、父さんは相変わらず腹を抱えてふんぞり返って笑う。
そんな父さんを見て俺は頭のてっぺんまで顔を赤く染めると、「笑うな!」と言いながら頭の上から蒸気をぷしゅうっと噴出させた。
ヒィヒィ、と声を裏返しながら笑う父さんは母さんから奪われたビールに手を伸ばし、ごく、と飲み込む。
ぷはぁ、と息を吐き出した父さんは腕で濡れた唇を拭うと、「ふうん」と鼻を鳴らしながら俺を見た。
「ようやく賢二郎も、恋をしたか」
白布「ようやくって…」
「母さんと話してたんだ。賢二郎はいつになったら彼女を家に連れてくるんだろうって。な?母さん」
母さんは「そうね」と言いながら小さく頭を縦に振って頷く。
「そうかそうか、好きな人か。で、もうその好きな人とは付き合っているのか?」
白布「付き合ってる」
「ぶふぉ!」と吹き出す父さんはダイニングテーブルの上に顔を伏せて肩を震わせて笑う。
息子が誰かと付き合う事を、こんなにもおもしろがる親がこの世にいるのか?
俺の父さんくらいしかいないような気がする。
「しっかりしてちょうだい!」と母さんから背中を叩かれた父さんは、ヒィヒィと声を裏返しながら頭を上げた。
「ごめんごめん、おもしろくて」
白布「……そっくりかよ」
「そっくり?」
白布「あいつに似てる、父さん」
「お?父さん、賢二郎の彼女にそっくりなのか。嬉しいなあ」
さっきから父さんが「彼女」と言う度に、俺の心臓がチクリと痛む。
チラ、と母さんを見ると、母さんは「ちゃんと言いなさい」とでも言うように、俺に目を細めた。
分かってる、言うよ。
ちゃんと言うよ。
彼女じゃなくて、俺は男の人と付き合ってるって事を、父さんに言うよ。
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連斗 - 磯野さん!退院おめでとうございます!この作品の投稿!ずっと待ってました!これからも応援させていただきます!無理なく頑張ってください! (2022年10月22日 21時) (レス) id: c0be3ab978 (このIDを非表示/違反報告)
バナナくん(プロフ) - 磯野さんだ〜!!まず退院おめでとうございます!久しぶりに占ツク開いてみたら通知欄に磯野さんの名前があってめっっっっちゃ嬉しかったです!今後も自分のペースで頑張ってください! (2022年9月2日 1時) (レス) @page48 id: 5cd13d94ad (このIDを非表示/違反報告)
磯野(プロフ) - 彩都さん» 彩都様、ご無沙汰しています!いつもいつも私の作品に目を通して下さりましてありがとうございます!今回はこの時間帯に更新します、とご報告出来ませんがなるだけ毎日更新致しますね。よろしくお願い致します! (2022年8月20日 0時) (レス) id: 017e5977a2 (このIDを非表示/違反報告)
彩都(プロフ) - おかえりなさい!退院?おめでとうございます!待ってました!磯野様のペースで更新してください!楽しみにしています! (2022年8月20日 0時) (レス) @page10 id: 11dbb3cd4a (このIDを非表示/違反報告)
磯野(プロフ) - ゆぅさん» ゆぅ様、大変長らくお待たせ致しました。随時更新していきますので、よろしくお願い致します! (2022年8月19日 23時) (レス) id: 017e5977a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:磯野 | 作成日時:2022年8月19日 21時