【HQ／男主】俺達の未来を誰よりも幸せに。1【白布賢二郎】

episode５ ページ17

川西「美濃のこと、考えてた？」


白布「え…」


川西「いつも真面目にノートをとってる賢二郎が、ノートを一切とってないなんて。美濃のこと考えてただろ」


白布「……そりゃ、…考えるさ」




スポーツバッグに教材を押し込んでいた手を止めると、俺は俯きながらぽつりぽつりと言う。



白布「和真のおばあさん……大丈夫かなって、ずっと考えてた。無事でいてくれ…、頼むから、無事でいてくれってずっと……考えてた」


川西「うん」


白布「本当は、今すぐにでも和真の元に行きたい。すげぇ気になる、おばあさんのことも、和真のことも。……でも、俺は和真の家族じゃないし、親戚でもないから……行きたくても行けなくて。……すげぇ、悔しい」


川西「そうだな」




俺は机の上に置いたスポーツバッグの紐をきゅっと握ると、微かに声を震わせながら言う。




白布「……太一」


川西「うん」


白布「……もし、……もし、の話」


川西「…うん」




────考えてはいけないって分かってる。




白布「もし……おばあさんが…」




────それでも、頭の中にはあるひとつの言葉が浮かび上がる。




白布「もし、最悪、おばあさんが…」




俺は弱々しく眉を八の字に下げながら、不安げな表情を浮かべて太一を見上げた。




白布「おばあさんが死んじゃったら、どうしよう……太一」




いざ、頭の中に浮かぶ最悪な結末を言葉にすると涙がじわじわと目尻に浮かぶ。




目の奥が熱くなって、鼻の奥がツンとして、胸がチクチクと痛み出す。




白布「おばあさんが死んじゃったら…あいつ、…和真、ひとりになっちゃうよ」


川西「賢二郎」


白布「和真にとってたったひとりの家族なのに…っ、太一、どうしよ……おばあさん、おばあさんがもし…」


川西「賢二郎、落ち着け」




ひくっ、と喉を鳴らして声を震わせる俺を見た太一は、その場にすとんとしゃがみ込む。




そして、スポーツバッグの紐を握り締めている俺の手を優しく握ると、椅子に座っている俺を見上げながら言った。




川西「まだ、そう決まったわけじゃないだろ」


白布「でも…、朝から全然、…和真から連絡なくて…」


川西「賢二郎は美濃に連絡した？」




俺は頭を左右にふるふると振るう。




白布「今連絡したら迷惑かなと思って…俺からは連絡してない……和真から連絡が来るのを待ってるんだけど……全然、電話もLINEも……来なくて」




→

episode５→←episode５

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す