STORY 5 ページ12
先輩、コイツはきちんと説明してあげなきゃ理解しませんよ。と心の中で伝えると、先輩は大きく溜息を吐いた。
「だーかーら、コイツが生意気に3年に混ざって練習してんのが、俺たちは気に食わねえの。ムカつくんだよ。調子のりやがって」
チッ、と舌打ちをする先輩に向けて、今度は「はぁぁああ!?」と長谷部は素っ頓狂な声を出す。
「要は、先輩達は、コイツが羨ましいってことっすか?」
長谷部の言葉を聞いて、その場にいた先輩達は一斉に長谷部へと顔を向ける。
図星をつかれたように悔しげな表情を浮かべる人もいれば、腹を立ててギリギリと奥歯を噛んでいる人もいる。
「てめぇ長谷部!なに言ってんだ!!」
「え、だってそうでしょ。アンタ達は、3年の中に入って練習している1年のコイツが、羨ましくて羨ましくてたまらなくて、3年のいない所でいじめようとしてるんでしょ」
長谷部は制服のズボンのポケットに両手を入れると、俺たちを囲む2年生の間をスルッと通り、ゆっくりと俺に歩み寄ってくる。
俺には一切目を向けずに、長谷部は俺の目の前に立った。
まるで、その小さな体で俺を守るように。
「俺、なんか間違ったこと言ってます?」
ニヤリ、と口角を上げる長谷部は、俺よりも随分と生意気で、自分に自信を持っているようにも見える。
けれど、どこかかっこ良くて、男らしくて、まるでヒーローのようにも見えてきてしまう。
「間違いだらけだ!及川が羨ましい?んなわけねぇだろ!」
「いやいや、羨ましがってるでしょー。前々からアンタら、3年の中にいるコイツを指咥えて見てましたもんね。俺、知ってますよ」
ケッケッケ、とまるで悪魔が悪うような不気味な笑い方をする長谷部に、後ろに立っている俺までもがゾクッと身震いをしてしまう。
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作者名:磯野 | 作成日時:2018年4月3日 20時