拡げた両腕２*倉持side* ページ36
額に巻き付けている白いハチマキの上から腕で汗を拭い、ふと境内の上へと目線を上げた時だった。
いた。
寝てるし。
境内の上に赤色のハチマキを首にぶら下げた小豆が大の字に寝転がっていた。
何してんだよ、お前…。
俺は境内の柱をガンッガンッと二回蹴り、顔を上げて小豆を起こそうと叫んだ。
倉「おいコラ、デブ！起きろ！！」
そう叫ぶとすぐに小豆は起き上がり、不機嫌そうな顔で俺を境内の上から見下ろしてくる。
寝起きなのか、それとも日向ぼっこをしていたのか、とりあえず癒しの時間を邪魔されて不機嫌なことには変わりはない様子。
倉「ヒャハハッ！ぶっせぇ顔してんじゃねーぞ！」
『なんだよ…倉持かよ』
倉「あ？俺が来て、内心嬉しいだろ？」
『それ自分で言うのかよ』
倉「事実だろ、事実」
小豆は境内の上で伸びをすると、境内から降りようとその場に立ち上がった。
『昼飯の時間だろ。降りるからそこどけよ』
きっとジャンプをして降りてくるんだろう。
俺は素直にその場から退こうとしたが、足を止めた。
周囲に誰かがいないか、辺りを見回す。
誰もいないことを確認すると、境内に立ったままの小豆を見上げて両腕を拡げた。
倉「ん」
そんな俺を見て小豆は驚きを隠せていないように、丸い目を更に丸くさせた。
そりゃそうだよな。
俺が腕を拡げてんだし。
倉「…来ねーのかよ」
『……折れても知らねぇよ』
倉「はぁー？お前みてぇな貧弱な男ひとり、余裕だっつの」
『さっきはデブって言ったくせに、今度は貧弱呼びかよ』
小豆は小さく溜め息を吐くと、俺と同じように辺りを見回した。
倉「誰もいねぇから安心しろって」
『別に気にしてねぇし』
倉「ほら、早く来いよ。来ねぇの？」
『……はいはい』
小豆の表情が少し緩んだ。
小さく息を吐き、そして境内からそのまま飛び降りてくる小豆を俺は見事、両腕で受け止めた。
倉「おも゛…！！」
『ハハッ、ナイスキャッチ』
倉「やっぱデブだわー」
『何言ってんの。お前より体重少ねぇよ』
170cm超えの男が飛び降りて来たんだ。
軽いはずが無い。
それでも俺は小豆を両腕から離さず、抱き上げた状態のまま顔を見つめる。
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作者名：磯野
| 作成日時：2017年9月5日 23時
