黙っていようと思った ページ22
遊歩道に立って海の向こう側に立つ観覧車を眺める俺を一月の冷たい風が触っていく。
そして1人、涙を流す。
夕方の終わりを迎えた空にかすかに流れ星が通ったのが見えた。
まだ、俺は君に伝えてないことがあったんだ。
いつか伝えようって。
俺の心の整理ができた日に。
でも、そのいつかから俺は逃げていただけだって今気づいたんだ。
君に言うのが、怖かったから。
後ろから迫ってきていた砂利を踏む足音が、俺のすぐ後ろで止んだ。
その足音は、すぐに俺の右側で聞こえ始める。
聞き慣れた声とともに。
「…やっぱり」
右を向くと悲しそうな表情をしたソンウさんがいた。
「…やっぱりここはAにとって何か大切な場所だったんでしょ？」
その瞳は澄んでいた。「ジニョンさんと前に来たとか」その言葉に俺は静かに頷く。
ソンウさんは俺のその反応に、そっか、と返して視線を光り輝く観覧車に向け話し始めた。
「…前、Aに元気がなかった日にソンウニヒョンがAの気晴らしになればって、ソンウニヒョンと俺とAの３人で出かけに行ったんだ。
どこに行きたいって聞いたらAがここのショッピングモールを言ったから、一日中そこで３人でふらふらしてた。
Aは終始笑顔だったんだ。だから、俺らは安心してた。
でも、ショッピングモールを出てここの観覧車を見たとき、Aの表情が暗いことに気がついたんだ。
…泣いてたんだ。観覧車を見て。
…多分、あいつは俺らに気をつかって、俺らを安心させるために、笑顔でいてくれたんだ。
そう、気づいたときに、やっぱりAを心の底から笑顔にできるのは俺じゃないって、そう思った」
ソンウさんは再び目を合わせた。
「…この前は、本当にごめん。
どうしてもAの力になりたかった。でも俺じゃ、ダメだったんだ」
うつむいた彼は、静かにつぶやいた。「…やっぱり、Aはジニョンさんの事が心から好きだったんだよ」
「あの観覧車、思い出なんでしょ？」
２年記念に撮った写真。今も携帯のホーム画面にしている、観覧車を背景に撮った写真が頭に浮かぶ。
…ソンウさんの隣で楽しそうに歩いていた君を見たあの日に、そんなことがあったんだ。
俺は頷いた。ソンウさんは嬉しそうに微笑んだ。
「…俺、ジニョンさんになりたかったな」
「なんでですか？」
「…Aの、大切な人になりたかった」
そう儚く微笑むソンウさんに、俺は君の大切な人にはもったいないと心から思った。
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gumi - 真実さん» そういうことを言って頂けて本当に嬉しいです。最近占ツクには全然来れていなくて、久しぶりにここを見に来たのですが嬉しいコメントが来ていてとても心が暖かくなりました。他のも読んでくださったのですか！？ありがとうございます！ (2018年11月11日 21時) (
レス) id: 574c7b7109 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - ただただ感動しました。こんなに人を泣かされる作品を作れる方は本当にすごいです。他の作品も少し読ませていただいたのですが、全部良くて、また読み返したいなと思います。 (2018年10月16日 22時) (レス) id: 77640d9d62 (このIDを非表示/違反報告)
gumi - パジさん» 返信遅くなって申し訳ありません！わー！ありがとうございます！文を書くのは好きなのですが得意な訳では無いので、伝えたいことがきちんと伝わるか心配だったのですが…(><) そんなにたくさんのことを感じていただけたなんて私は幸せものです！ありがとうございます^^ (2018年7月2日 3時) (レス) id: 574c7b7109 (このIDを非表示/違反報告)
パジ - はじめまして！全部読みました！結構速い段階から泣きっぱなしでした…なのに読み終わった後は何だか笑顔になれて、私もいつか素敵な人に合えるのかなとか、もっと家族や友達を大切にしようと思えるような、素敵なお話だと思いました。 (2018年6月26日 23時) (レス) id: 85af0eaaac (このIDを非表示/違反報告)
gumi - KooKさん» わー！すごい嬉しいです！！全部読んでくださったのですか！？ありがとうございます！！ (2018年4月28日 23時) (レス) id: 574c7b7109 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：gumi | 作成日時：2018年2月9日 16時
