遅すぎたのかも ページ13
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あの日から3日が経った。
俺は前までやっていたように、毎朝、病院にいる君の元を訪れるようにしている。
君はあの日から心を開いてくれたみたいで、昔の明るく天真爛漫な姿だ。
「…ん。
…あ、おはよ」
相変わらず、寝起き姿は猫のようだけど。
「おはよ、A。
何か飲みたいものある?」
「ううん、特にないかな〜。
あの子の写真見せてよ」
「あの子」というワードに思わず笑みがこぼれる。昨日話した猫の話が頭から離れないんだなあ、と。
実は、この前出会った黒猫を飼っている。あのまま持って帰ってどうしようか悩んだのだけれど、俺の住んでいるアパートが動物OKなのが救いだった。
名前はまだ決めていないので君に話した時に「あの子」と呼んで紹介したのだ。
「はい」
携帯のギャラリーに入っている写真を何枚か見せる。飼ってあげたクッションの上で寝ている写真、猫じゃらしで遊んでいる写真、ご飯を食べている写真。君はどれも嬉しそうに笑顔で眺める。
「可愛いなあ。
男の子?」
「ううん。女の子。
名前、何がいいと思う?」
「Aが決めてよ」と言うと唇に人差し指を当てて考える素振りを見せた。そしてしばらくして、君が何かを思いついたように明るい表情になる。
「あ!
ビョル!!」
「びょる〜?」
「うん!
ほら、お星様みたいに目がキラキラしてるじゃん?」
まあ確かに…と思いながら猫じゃらしで遊ぶあの子の写真を見る。
「いいね。
じゃあ、ビョルで」
君はやったー、と嬉しそうに微笑んだ。そしてビョルがいる訳でもないのにその名前を呼んでいる。
「ビョルやー、ビョル〜」
「今度、会わせてあげる。
性格がAに似てるから気が合うと思うよ」
君はおっ、と言った。「ちんちゃ〜?」
「うんうん。
じゃあ、大学行ってくるね」
「はーい。
気をつけてね」
立ち上がり、ドアを開けようとした時「ダーリン」と呟く君の声がした。
少し驚いて振り向くと、おもしろおかしそうに肩をすくめて笑う君の姿。
「…なに」
「呼んでみたかったの。
クサイとか言わないでね?」
「そんなの言わないけどさあ。
Aはまだベイビーなんだから」
「ええー、じゃあオンマかあ」
「ん。
じゃあね」
「はーい」
君の笑顔に送られ、俺は部屋を後にした。
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gumi - 真実さん» そういうことを言って頂けて本当に嬉しいです。最近占ツクには全然来れていなくて、久しぶりにここを見に来たのですが嬉しいコメントが来ていてとても心が暖かくなりました。他のも読んでくださったのですか!?ありがとうございます! (2018年11月11日 21時) (レス) id: 574c7b7109 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - ただただ感動しました。こんなに人を泣かされる作品を作れる方は本当にすごいです。他の作品も少し読ませていただいたのですが、全部良くて、また読み返したいなと思います。 (2018年10月16日 22時) (レス) id: 77640d9d62 (このIDを非表示/違反報告)
gumi - パジさん» 返信遅くなって申し訳ありません!わー!ありがとうございます!文を書くのは好きなのですが得意な訳では無いので、伝えたいことがきちんと伝わるか心配だったのですが…(><) そんなにたくさんのことを感じていただけたなんて私は幸せものです!ありがとうございます^^ (2018年7月2日 3時) (レス) id: 574c7b7109 (このIDを非表示/違反報告)
パジ - はじめまして!全部読みました!結構速い段階から泣きっぱなしでした…なのに読み終わった後は何だか笑顔になれて、私もいつか素敵な人に合えるのかなとか、もっと家族や友達を大切にしようと思えるような、素敵なお話だと思いました。 (2018年6月26日 23時) (レス) id: 85af0eaaac (このIDを非表示/違反報告)
gumi - KooKさん» わー!すごい嬉しいです!!全部読んでくださったのですか!?ありがとうございます!! (2018年4月28日 23時) (レス) id: 574c7b7109 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:gumi | 作成日時:2018年2月9日 16時