愛をこめて。２

手遅れなのかも ページ12

「すみません」


そう告げるよりも先に体を動かし、ドアを開ける。看護師さんの俺を止める声が背中の方で聞こえた。

だが、俺の目に入っているのは君の姿。


「…A」


とても、懐かしかった。

少し痩せているような気がした。やっぱり、具合が悪いんだろうな、我慢させ過ぎちゃったなって思った。


君は俺を見るなり驚いたように目を開く。


そして言った。


「どうしてここに来たの」


その強い口調は、最後に会ったあの日そのものだった。

でも、俺は知っている。君は俺に迷惑をかけたくないからそうやって言ってるってこと。

そう思うと、君を抱き締めずにはいられなかった。

君のもとに駆け寄るようにして近づき、この手でその小さな体を抱き締める。


「…気づかなくて、ごめん」


「なんで来たの｣


「…我慢させて、笑顔ばかり向けさせて。

独りで辛かったよね。

今まででも具合悪い時沢山あったでしょ？
なのに、気づいてあげられなかった。

毎朝、会ってたのに｣


もう、我慢しなくていいんだよ。

俺が気づいてあげられなかった。それが悪いんだから。


｢…私は、ジニョンのこともう好きじゃないよ｣


君の声は震えていた。

本当に分かりやすいよ。


｢もう、嘘つかなくていいんだよ。

俺知ってるから。もうAが我慢する必要なんてないから。

…もし、Aのその気持ちが嘘じゃなくても、

俺はAのこと嫌いになんてなれないよ｣



｢…ジニョン｣



君はごめん、と小さく呟いた。俺ははただ、頷いた。



｢…本当は、大好きだから｣



その言葉が、心のなかに暖かい何かになって空いていた穴にゆっくりと溶け込んでいくようだった。

ほっとして、張っていた糸が緩んだようにからだの力が抜けるようだった。



｢うん。知ってる｣



俺は君だけに聞こえるようにそう呟いて、君の頭を優しく撫でた。


…よかった。


そう、心の底から思った。

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