大好きなあの声 ページ8
遠くに走り去る見慣れたその姿を見ながら、今までについたことがないくらいの深く重いため息をつく。
…ジニョン、ごめんね。
今まで長い間黙っててごめん。でもAが言わないでって言ったから、言えなかったんだ。
4ヶ月前のあの時のことを思い出しながら、おもむろにポケットから携帯を出して、Aにメッセージを送った。
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「…オッパ、あのね」
「んー、何?」
Aが心に何かを隠しているというのは、その月明かりに照らされた辛そうな表情を見ただけですぐにわかった。
だからAが話しやすいように、いつも通りの雰囲気で反応した。
「私、二年前から調子が良くなくて、病気にかかってた。
3ヶ月に一回、定期検診があったから今月行ったら、病状が悪化してて…余命宣告された。
…どうしてだろう、オッパ。
私…神様に嫌われるような、なにか悪いことでもしたのかな」
その声は震えていた。Aとは高校生の頃から仲が良かったけれど、そんな不安と恐怖に怯えた姿を見たのは初めてだった。
どんな言葉をかければいいかわからなくて、ただ、俯くAを抱き寄せた。
バイトでの心配そうなソンウと明るく振る舞うAの会話が頭をよぎる。
「…ジニョンには言ったの?」
Aは俯いたまま、首を横に振った。
「…実は、余命宣告をされたのがジニョンの誕生日の日だったの。
その日に言おうって思ったりもしたんだけど…。
あんなに嬉しそうな顔が悲しい顔になるのをのを想像したら言えなくて。
そのまま、ずっと引きずってて…」
「…これからも言わないつもりなの?」
「…うん。
体調も悪化していくばかりで、最近はすごいフラフラしてて、ジニョンに明るく振る舞って隠し通すのが辛かった。
…だから一緒にいて傷つけたり心配かけるなら、一緒にいない方がいいんじゃないかと思って…」
Aは涙を隠そうと必死にそれをコートの裾で拭いているように見えた。
「…A。辛かったね。
泣きたいなら、泣きなよ」
Aは明るい。そういうイメージを幼い頃から周りに持たれていたことが、今のAを逆に苦しめる原因にもなっていたのだと思う。
高校生の頃からそばにいたのに、心配をかけてはいけない、自分は明るくいなきゃいけないってAのストレスになっていたことに俺は気づけていなかったんだ。
だから、今は精一杯泣かせてあげなきゃいけないんだ。
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gumi - 真実さん» そういうことを言って頂けて本当に嬉しいです。最近占ツクには全然来れていなくて、久しぶりにここを見に来たのですが嬉しいコメントが来ていてとても心が暖かくなりました。他のも読んでくださったのですか!?ありがとうございます! (2018年11月11日 21時) (レス) id: 574c7b7109 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - ただただ感動しました。こんなに人を泣かされる作品を作れる方は本当にすごいです。他の作品も少し読ませていただいたのですが、全部良くて、また読み返したいなと思います。 (2018年10月16日 22時) (レス) id: 77640d9d62 (このIDを非表示/違反報告)
gumi - パジさん» 返信遅くなって申し訳ありません!わー!ありがとうございます!文を書くのは好きなのですが得意な訳では無いので、伝えたいことがきちんと伝わるか心配だったのですが…(><) そんなにたくさんのことを感じていただけたなんて私は幸せものです!ありがとうございます^^ (2018年7月2日 3時) (レス) id: 574c7b7109 (このIDを非表示/違反報告)
パジ - はじめまして!全部読みました!結構速い段階から泣きっぱなしでした…なのに読み終わった後は何だか笑顔になれて、私もいつか素敵な人に合えるのかなとか、もっと家族や友達を大切にしようと思えるような、素敵なお話だと思いました。 (2018年6月26日 23時) (レス) id: 85af0eaaac (このIDを非表示/違反報告)
gumi - KooKさん» わー!すごい嬉しいです!!全部読んでくださったのですか!?ありがとうございます!! (2018年4月28日 23時) (レス) id: 574c7b7109 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:gumi | 作成日時:2018年2月9日 16時