217. ページ22
.
『………海、』
電車を降りた私は、ふっかに連れられ海辺の近くの舗装された道を歩く。
ボソリとそう呟いて、横に見える港に足を止めて柵にもたれた。
冬だから吹き付ける風は冷たいけれど、ちょうど真上あたりに登った太陽の光をキラキラと反射する水面が眩しくて、私は少し目を細めた。
「なに、海好きなの？」
『うん、』
ふっかも足を止めて、私の隣に立つ。
潮の匂いとふっかからする香りが混ざった。
…落ち着く匂いだ。
何度も、何年も嗅いできた安心する彼の匂い。
見えるのは海に浮かぶ大きな船と、橋と。
それから真っ青な冬の青空。
まだ少し緊張気味の私の横で、ふっかは何かを探すように視線を動かす。
「今から行くのはねー、あそこ。」
ふっかが視界の奥、海に向かって飛び出てる建物を指差して、「あそこにあるレストラン予約しといたから。」と微笑んだ。
『…え、』
「とりあえず飯食わねーと、」
腹減っただろ？と彼は柵をつかんでいた手を離して、前のめりになっていた身体を起こす。
予約、してくれてたの、？
私と一緒に食べるために？
………あぁ、違うか、
今日はクリスマスイブだしどこの店も混んでるだろうから、先読みして予約しておいてくれたってだけかも。
でも、それでも私にとってはすごく嬉しいことなんだ。
ふっかとご飯を食べるのは大体大衆居酒屋かファミレスか、そんなところばかりで。
別に一緒にご飯を食べながら話すだけで楽しいからそれでもいいんだけど、
こういう日にいつもとは違う場所に連れていってくれこと。それがすごく嬉しかった。
『うん、お腹空いた。』
腕時計の針は、もうすぐ12時。
そう言えば、彼は遠くの建物に当てていた視線を私に移す。
「お、じゃあ予約の時間もそろそろだし行くか。」
『うん。』
さっき指差した方へ歩き出したふっかの背中をほんの少し盗み見てから、
私も靴音を鳴らしてその後を追った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5504人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こゆき(プロフ) - *なべふか*さん» 最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました…！！そのように言っていただけてとても嬉しいです…！新作もよろしくお願いします！！ (2020年6月25日 10時) (
レス) id: e5c6dc30ce (このIDを非表示/違反報告)
*なべふか* - お疲れ様でした*ストーリー素敵過ぎです!!最後の展開は号泣でした､､､今読み終えすごくロスしております笑また1から読んでみようと思います^^ありがとうございました!新作も覗かせて頂きますﾈ!! (2020年6月25日 0時) (レス) id: 2b33477f89 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - 名無し85099号さん» コメントありがとうございます…！！リアルですか…！嬉しいです！！こちらこそ最後まで読んでくださってありがとうございました！今後もよろしくお願いします…！ (2020年6月24日 18時) (レス) id: e5c6dc30ce (このIDを非表示/違反報告)
名無し85099号(プロフ) - ほんとになにかどこかのドラマか映画を見ている感覚になるほどストーリーが素敵でした！そしてまたふっかさんがリアル(涙)ほんとに面白かったです有難うございました！ (2020年6月23日 18時) (レス) id: ead5991952 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - 希依良さん» 最後まで読んでいただきありがとうございました！！とてもありがたいお言葉嬉しいです…！今後もよろしくお願いします！！ (2020年6月19日 10時) (レス) id: e5c6dc30ce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こゆき
| 作成日時：2020年6月1日 15時
