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彼はまっすぐ私を見ている。そんなこと言ってくれなくていいのに、誰かに言わされてるの?私はあなたにとってのバレーボールと同じでいいの?今の彼なら、牛島くんなら、私が訊くこと、ちゃんと答えてくれるのかな。私に向かい合ったあなたが幻じゃないことを祈る。


「お前がそばにいたから、知ったことが沢山ある。勉強もそうだが、行事のこと、感情、それと自分だ。バレンタインは特にそうだ」


「俺にとって、お前と過ごした二年はすごく濃密な時間だ。俺はその時間の中で、お前を多く知った。あんな奴らの比にならないほど」

「俺と過ごした二年とあいつらと過ごした六年を比べても、お前は六年の方に囚われて俺との二年はどうだっていいのか」


「そんなことないよ、絶対に違うよ」

牛島くんと過ごしてきた日々のことなんかこれから一人で生きていく先でも絶対に忘れないと理不尽な神様にでもなんでも誓ってやる。牛島くんが私のことを忘れても私は私を引っ張ってくれたあなたを絶対に忘れたりなんかしない。

私が初めて牛島くんを見つけたあの日からすべては今に至るまで続いている。ほら、やっぱり見つけたのは私のほうだ。





だから今でも訊き出したいことは覚えてます。私はあなたのことを忘れない。





「なら、たったのだの、そんなことは言うな。俺にとっては大切な二年だったんだ」

時間の流れがやけに遅く感じた。あの人が私を見ていてくれる間は終わりのないスローモーションみたいに、一言一言がはっきり耳に届く。視覚が彼を認識している限り目を離せない。

「お前がいたおかげで、自分のことも知れた。俺は、今のお前をよく知っている」


自分のことすらいまいちよくわかってない私の何を彼は知ってくれているんだろう。

「牛島くんはっ、」

焦った言葉が大慌てで外に飛び出した。空気に触れたら霞んで消えちゃうような上ずった声だ。自分の嫌なところばかり目について重くのしかかってくるくらいなのに、牛島くんは、



「牛島くんは、私の何を知ってくれてるの?」

ちょっと独りよがりだったかもしれない。突き放すみたいに言ってしまったことを後悔してすぐさま弁明の言葉をひねり出そうとしたけれど、彼がなんて返してくれるのか、答えが知りたくて口が回らなくなった。
同時に涙が出そうになった。彼の目の前でみっともなく泣くのはもうウンザリなのに、涙腺を操縦できる日は一向に来そうにない。

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ゆに(プロフ) - あゆむさんの物語の書き方、構成、全部好きです!これからも更新頑張ってください。ずーっと応援しています!! (2019年1月5日 13時) (レス) id: 2609f34306 (このIDを非表示/違反報告)
ゆに(プロフ) - 覚編も合わせ全編読ませていただいています! (2019年1月5日 13時) (レス) id: 2609f34306 (このIDを非表示/違反報告)
梅星饅頭(プロフ) - ご、ご本が出るんですか!??これは買わないといけない……ア"ッ分かります需要と供給がまっったく一致していないですよね…つらい! 今年も一ページ目から一文字一文字若利くんの尊さを感じて新年迎えさせていただきます。お体に気を付けて あゆむさまもよいお年を! (2018年12月31日 23時) (レス) id: baf07f2d20 (このIDを非表示/違反報告)
くー(プロフ) - 本だァ“ァ“ァ“ァ”ァ“ァ”!!!めっちゃ楽しみにしてます!!!! (2018年12月23日 15時) (レス) id: 4b69e817ff (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - 本めちゃくちゃ欲しいです!!書籍化になるのを楽しみにしています。 (2018年12月23日 15時) (レス) id: 0e45367a12 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あゆむ | 作成日時:2017年12月28日 20時

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