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 俺の胸元に埋めていた顔を、涙を拭うような動作をしてから上げたアイツに、ぷっと笑いが零れ落ちてしまう。アイツも俺と同様、憑き物がとれたような顔をして笑っていた。


『……今度録音してみれば? 笑』


 アイツのちょっと煽るような口調さえ、可愛らしく思えてしまう。未だに複雑な気持ちは残ったままだけれど、今は―――


「ふっ…ははっ!」
『ふははっ!!』


 ―――ただただ、おかしい!
 腹を抱えてひとしきり声を上げて笑った後は、ふつうに二人で晩飯を食べた。




「山下さんと食べたんじゃなかったの?」

『えー、俺が気の置けない誰かと食事すると思う?』

「いや、まあ……って痛っ」

『バァカ』

「悪かったって。でもだからって、デコピンはしなくてもよくない?!」

『疑うお前が悪い(笑)ハハッ!

 ……まあ、気を遣いながら食べるのって身体に悪そうだし、親友(おまえら)以外とはとらねぇよ。ましてや、付き合いや仕事でもねぇのに』

「……フッ、そうかよ」

『そうだよ、嬉しいか? 笑』

「まあ 笑」


 ......ちょっと、いやガッツリ照れた。安心と恥ずかしさで、どこかに埋まりたい気分だった。調子を良くしたAは、酔っているのかと疑うほどのご機嫌で、俺の頭をぐしゃぐしゃに撫でまわしている。正直、抵抗する気すらも起きないほど嬉しくて、それを隠すのでいっぱいいっぱいだった。








『……なぁ』


 甘く淹れてもらったコーヒーを飲みながら、月を見上げぼーっとしていると、俺に背を合わせるように座ったAが優しい音色で、話を振ってきた。



「ん。どうしたよ」

『俺のツイートのリプ欄で、ファンの子達が一斉に自.決しようとしてるんだけど』

「っは?」

『いや何…死んでもいいわって。死なれちゃ困るんだけど?!』

「……ククク、ふははっ」

『何笑ってんだよ』


 表情は窺えないけれど、きっと不貞腐れたような顔をしているんだろうな。声色でわかる。



「いや、だって……お前、国語得意なのにっ、ぶふっ」

『もー、笑うなって!』

「じゃあ質問。月が綺麗ですねの意味は?」

『そのまんまだろ?』

「ヒント、夏目漱石」

『夏目……漱石…………あー、I Love You だっけか?』

「そ。じゃあ、夏目漱石のいう表現に対する定番の返しは?」

『あ〜ね。…皆、粋だな』


 お前がな、と腹の裡でツッコもうとしてやめる。声を殺して笑っている俺に、改めてアイツから拳骨を食らったのは言うまでもないかな。…痛かった。






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☆【祝!SSデビュー!】…8/29更新→←☆



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若宮(スイス/シャラルー☆)(プロフ) - いろはさん» わわわわ…! コメントありがとうございます。綺麗な文章だなんて言われ慣れて無く、気が動転してしまいました💧 なけなしの語彙力と文章構成能力で執筆しているので、むれがありますが、書けるときにゆっくりと更新していきますので、続編もよろしくお願いします。 (2022年3月25日 23時) (レス) id: 85bfe49477 (このIDを非表示/違反報告)
いろは(プロフ) - 文字って主さんが書いているんですか??急でごめんなさい。そうだとしたら綺麗すぎません?!尊敬します…これからも頑張ってください! (2022年3月25日 19時) (レス) @page2 id: 16f74b0176 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:シャラルー☆ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年7月21日 23時

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