子供3人 ページ4
貴方side
『常は私の夢を叶えてくれるよ。きっと』
『……私なんかで良いの?』
『あぁ』
夏油が私の髪を櫛の様に掻き撫でる。
それが擽ったくて、思わず笑ってしまう。
『2人で幸せな世界を作ろうね』
「っは」
目が覚めた。
長く眠っていたのか、体がやけに怠く重い。
最近、良く眠れていなかったからかな。
まだ布団に残る温もりに縋っていたい。
酷く懐かしい夢を見たものだ。
頭が可笑しくなりそう。
そんな幸せな日々はとっくの昔に壊れてしまったのに。
「はぁぁぁ」
……あれ、私そう言えば呪霊にやられたんじゃなかったっけ?
死んだの?
ゾンビになったの?
てかここどこ?
心無しかここを覚えている気がする。
鼻にツンと来る薬品の匂い。
やけに白いベットのシーツ。
柔らかいカーテン。
「お? 目覚めたかい?」
「え?」
カーテンがシャッと開いて、割れ目から女性が顔を覗かせる。
その顔には見覚えがあった。
いや、まさか、だって。
「私は家入 硝子だよ。君、名前は?」
私が、私達が10年前に裏切った高専の家入 硝子?
短かった髪が長く伸び、顔には隈がある。
白い白衣を身に纏い、片手に煙草ではなく、資料を持っている。
仮に彼女が私の知っている家入 硝子だとして何故初対面の様に振る舞うのだろう?
まさか私の事忘れた?
いや、あの硝子でも忘れられない筈だ。
クラスの半分、と言っても2人だが、離反した同級生なのだから。
「おーい、どうした? 怯えているのか? ……全く、私は子供の扱いがあまり慣れていないと言ったのに」
子供?
ふと自分の体を見下ろす。
伸ばした髪が短くなり、手足がちっちゃい。
せっかく夏油と鍛えてついた筋肉も無い。
怖くなり、ペタペタと顔を触る。
「えっ、えっ、子供化してるっ?」
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作者名:陽毬 | 作成日時:2021年4月1日 16時