我儘 (ページ10)

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『おはよう！』

広瀬「あ、Aおはよ！隆ちゃ～ん！A来たよ！」

神木「笠松さん！神木です。よろしくね」

　
アリスに呼ばれニコニコとした笑顔で手を差し出す神木さん。

　

『よろしくお願いします！』

神木「敬語はやめてよ、俺ら同期だよ」

広瀬「歳は一個上だけどね～」

神木「留学行ってて一年遅く入社したんだよ。でも気にしないでタメ口で話してね」
　
　
　
彼に釣られてつい笑顔になる。
そんな和やかなムードをぶち壊しにしたのはあの男だった。
　
　
　
　
吉沢「笠松さん、ちょっと来て」

相変わらず平坦とした様子で私を連れ出す。

　
『え、吉沢さんどうしたんですか？！』

吉沢「いいから」
　
　
何の説明もなく渋々吉沢さんの後ろを黙ってついて行く。
通りすがる女性社員が吉沢さんを目で追っているが、彼は気にする素振りもなく早歩きでオフィスの外に出た。
　
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既に止まっているタクシーに乗り込むと
ようやく彼が口を開く。

　
　
　
　
吉沢「剛さんに現場見せてあげてって頼まれたから」
　
　
現場とはおそらく昨日アリスが言っていた
広告撮影に立ち会う事だろう。
　
　
　
　
　
吉沢「はいこれ。コピーする時間なくて俺のだけど、笠松さんは見てるだけだから軽く読んどけば大丈夫なので」
　
　
　
　
渡された資料は要点だけが分かり易くまとめられ、びっしりと書き込みがされていた。
　
これを見るだけでも彼の仕事に対する熱量が伝わってくる内容量だ。
　
　
　
　
　
..
　
　
吉沢さんを追って現場に入ると、見たことのない景色に唖然とした。
　
　
　
　
　

吉沢「この人、カメラマンの山崎」
　
　
紹介された山崎さんは、爽やかな笑顔で
「はじめまして。山崎賢人です」と名乗った。
これまた整った顔立ちで、吉沢さんと並ぶと雑誌から抜け出してきたようだ。
　
　
山崎「亮の彼女？」

吉沢「違うよ笑昨日移動してきたばっかの笠松さん。」

『笠松です！よろしくお願いします』
　
山崎「なんだ～、ごめんね、よろしく！」
　
　
　
　
　
　
　
　
吉沢さんが笑った。
あまりにも珍しい出来事に立ち尽くしていると、
「…さん入られます！」という一声で現場が慌ただしく動き出す。

「…もしかしてA？」

あの時よりも低い声、大人びた表情、圧倒的なオーラ。
それでもすぐに誰かは解った。

『…大将』