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それは、私が中学生の時の話です。
近所の公立の中学校に進学したんですけど、その学校は私の通っていた小学校の他に、隣の小学校からも進学する人が多い学校でした。
入学式が終わって、教室に出席番号順に座りますよね?
私は窓側から2列目の一番前だったんです。
“片岡”で、か行だから小学校の入学したての頃もその席だったので戸惑いは無かったんですけど。
隣の子が出席番号1番の子でした。
隣の席は男の子でした。
多分隣の小学校から来た子。
その子は席につくなり突っ伏してしまって、その後担任の先生が入ってきても動きませんでした。
でも、先生もそれを咎めないんです。
だから私はなんとなく、彼はワケありなんだと思いました。
だって――――先生の顔が苦々しく歪んだから。
子供ながらに、先生は彼の事があまり好きではないのだと思いました。
授業が始まって、友達も出来て。
勿論、隣の小学校の子とも仲良くなりましたよ?
それで、思いきって聞いてみたんです。
隣の彼にどうして誰も話しかけないの、って。
すぐに後悔しました。
聞かなきゃ良かった。
聞かなかったらきっと、優しい友達だった。
……その子達、言ったんです。
『アイツは変人だから関わっちゃダメなんだよ』
『それに気持ち悪い』
『アイツは、住む次元違うんだって』
私にもどうしてか分からなかった。
無性に腹が立ったんです。
彼女達の嘲笑うような、馬鹿にしたような顔も言葉も。
だって私、知ってたから。
まだ話したこともない。出会ってからの時間だって少ない。――――それでも。
『そんな風に言うあなた達と同じ次元に生きていることの方が、私には恥ずかしい』
机に突っ伏す彼の手には、いつも何かが握り締められていて。
小さな小さな声で、泣きそうな声で、切ない声でたまに呟くから。
『寂しいよ、じいちゃん』
先生に聞きに行ったんです、彼の事。
とても悲しい話でした。
ご両親からよく思われず、祖父だけが彼を見てくれていたこと。
その祖父が亡くなったこと。
あの言い合いから、私の友達はいなくなりました。
初めて独りの辛さを感じました。
でも、それで良かったと思ってます。
『私は、片岡Aです。
貴方とお話がしたいです』
その時初めて、彼の顔を見ました。
五月の事でした。
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♭れもん - な、なける…すみー… (2020年1月5日 3時) (レス) id: 3207116b3a (このIDを非表示/違反報告)
ちょこしゅー。(プロフ) - 急にこんなもの投稿するなよォ……好きだ……… (2019年12月16日 0時) (レス) id: 4110ba5437 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一華 顕音 | 作成日時:2019年12月15日 17時