検索窓
今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:169,051 hit

第29話 ページ29











あの夜、万里が俺を連れ出した理由。
ああ言っていたけど多分違う。
けどそれは、考えなくてもいいと思う。


考えては、いけないと思う。




拳ひとつも入らないくらいの距離感。
それは最早定着していて、それに対してAの反応が変わることもなくなった。

つまり、慣れた。
Aはもうあんまり怖がることはなくなった。
それは俺のおかげかもしれない。
でも実は――――違うのかもしれない。

混ざる単語が減るたび、ふと切なくなるのは
少なくとも俺がこの関係に優越感を感じていたからだろう。






「椋くんの少女漫画にあったんだけど、男の子の告白シチュエーションも色々あるんだよね」

「実際やってるやつはいないけど」

「え、そういうもん?」

「あんな恥ずかしいセリフ言うやつなんて万里ぐらいじゃない」

「……言いそうなのがちょっと」








変わったんだろうか。
それとも、これが本来のAなのだろうか。



口調が柔らかくなった。
表情が柔らかくなった。
髪をいじるようになった。
化粧をするようになった。

クラスメイトやそこら辺にいるのと変わらない。
Aはすっかり“女の子”だった。




それが、妙に胸を騒がせる。
今度は俺が戸惑う番だった。







「あ、じゃあさ、嘘告練習しよ」

「…なんで?」

「私は演技の幅を広げるため。碓氷くんは監督用の予行練習。……利害の一致、でしょ?

ちなみに恥ずかしいバージョンもあり」







――――天馬とどうなったの。



聞くのは簡単なはずなのに、言葉にならない。
万里がきっかけになったのは分かった。
だってあの日からAの目が変わったから。

天馬も以前より顔が良くなってた。
苦しそうな、悩ましそうな顔は無くて
ただただ、楽しそうで。



そんな2人がよく似てるから
よく分からなくなる。



勿論、嫌なわけじゃない。
俺にとってのAは友達のままだし、Aにとっての俺の位置も変わらない。
そして変えるつもりもない。

でも何かが違う。






「碓氷くんは、なんて言う?」






大好きな監督。
俺より歳上だけど、そんなの関係ない。
ずっと一緒にいれたらって思う。

俺のことを考えてほしい。
どんな表情も見たい。
出来れば、俺だけに見せて欲しい。







「――――勝手に、綺麗にならないで」







俺のために可愛くなったらいいのに。

第30話→←第28話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (219 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
544人がお気に入り
設定タグ:A3! , 皇天馬 , 碓氷真澄
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

春野さん(プロフ) - 完結おめでとうございます!タイトルからこんな風に繋がるとは思ってなくて、思わず涙が出ました。本当に素敵な作品だと思います。この作品に惹かれたのがきっかけで天馬最推しになった位(笑)次回作やアナザーストーリー、あれば期待しています、頑張ってください! (2018年8月31日 10時) (レス) id: 43b6e8fc40 (このIDを非表示/違反報告)
ゴム手袋(プロフ) - いいところで更新停止ー!!!めちゃくちゃいいとこでー!!!待ってますー!!!!! (2018年8月7日 10時) (レス) id: 2405ca442d (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - 狂さん» コメントありがとうございます!嬉しいです…!頑張ります!! (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - Mareさん» コメントありがとうございます!更新できるように頑張りますね! (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - とても引き込まれました!頑張ってください! (2017年12月29日 11時) (レス) id: 4e15e8f7b9 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:一華 顕音 | 作成日時:2017年12月7日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。