検索窓
今日:1 hit、昨日:13 hit、合計:169,184 hit

第27話 ページ27










「途中まで送る。真澄も来い」

「は、なんで」

「いいから。行くぞA」

「呼び捨てやめろや」




それなりの夜更け。
実はこの寮から家はそんなに遠くない。
お母さんがビロードウェイの近くに住みたいと言って決まったのが今の家だからだ。


そしてその道をどういうわけか万里さん(ゲームには案の定負けた)と碓氷くんと並んで歩く。

流石にカツラまで借りて変装しているからバレないとは思うけど、下手したら二股スキャンダルにでっち上げられそうな状況。

とりあえず何が言いたいかと言えば
………沈黙辛い。
仲がいいのか悪いのか分からない2人だし。
共通の話題も見つからない。…詰んでる。



人のいない道。
切れかけの電灯。
沈黙した男女。
ドラマが1本書けそうなシチュエーション。





「なぁ、ひとつ聞いていいか」

「え、ぉ、おう?」

「なんだそれ」





口を開いたのは万里さんで。
真澄くんはただ黙って隣を歩いているだけ。

正直、急激に距離を縮めてくるこの人はよく分からない。
芸能人に別段興味があるわけでもなし、そもそも芸能人扱いするわけでもなし。
何より――――何かを気付いたような、見透かす目が苦手だ。

それは、







「なんで、“椎名涼”をやりたいって思った?」







決して触れてほしくない領域に
手が届くほどに。






「なんで、だったかな」

「覚えてねぇのかよ」

「幼児期の記憶なんて曖昧でしょ」

「ふーん」





それでも決して触れようとしないのは
彼なりの優しさなのだろうか。
それが尚のこと、焦りを煽るのに。

いや、本当は分かってるんだ。
この人は、深くは聞かない。
こちらから言わない限り。
それを知ってるから、
私はこの人を遠ざけないのだ。

つまりは――――甘えている。
天馬と似ているこの人に。




「天馬は」

「え?」

「……お前のこと、かなり気にしてるみてぇだから」

「あ、…え?」




憎らしいライバルのような
温かい兄のような
大きな手で頭を優しく叩く、そんなこの人に。





「アイツ、良い奴だからさ。
泣かせんなよ、天馬のこと」

「そんなん、」






――――私の方が知ってるし。





それでも甘えずにいられないのは
その手を拒めないのは

この人が、私の、
理想の“涼”によく似ているからだ。






「ねぇ俺いらなくない?」

「ふたりきりとか無理」

「こっちのセリフ!」

第28話→←第26話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (220 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
544人がお気に入り
設定タグ:A3! , 皇天馬 , 碓氷真澄
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

春野さん(プロフ) - 完結おめでとうございます!タイトルからこんな風に繋がるとは思ってなくて、思わず涙が出ました。本当に素敵な作品だと思います。この作品に惹かれたのがきっかけで天馬最推しになった位(笑)次回作やアナザーストーリー、あれば期待しています、頑張ってください! (2018年8月31日 10時) (レス) id: 43b6e8fc40 (このIDを非表示/違反報告)
ゴム手袋(プロフ) - いいところで更新停止ー!!!めちゃくちゃいいとこでー!!!待ってますー!!!!! (2018年8月7日 10時) (レス) id: 2405ca442d (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - 狂さん» コメントありがとうございます!嬉しいです…!頑張ります!! (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - Mareさん» コメントありがとうございます!更新できるように頑張りますね! (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - とても引き込まれました!頑張ってください! (2017年12月29日 11時) (レス) id: 4e15e8f7b9 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:一華 顕音 | 作成日時:2017年12月7日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。