第23話 ページ23
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――――痛ましい。
――――けれど、酷く美しい。
自分より7つも下の少年の願いは、恐ろしく純粋で。
そのために、まるで命を削るように傷付き、耐えている。
逃げることなんて考えもしない彼と逃げた自分の違いの大きさに唖然とした。
彼が評価される理由が、本当の意味で分かった気がする。
同時に、納得する。
彼が完璧にこだわる理由。
彼を進ませる動力の根源。
「拒まれたくない。Aの相棒でいたい。
――――アイツにとっての1番は、俺がいい」
愛の言葉のように甘いのに、彼はそういうつもりで言ってるんじゃないだろう。
彼にとって共に過ごした時間は、経験は“現在”の自分を作る上で最も根底にあるからこそ、大切なんだ。
その美しい記憶が壊れるのは、
きっと想像以上に怖い。
その恐怖を――俺は知っている。
「いつか、僕は言ったね。
「本当の意味で、初めて役に共感してるから戸惑ってる」んじゃないかって。
向こうもそうなんじゃないかな」
「え?」
1度だけ。
俺は“その子”と話した事がある。
女の子にしては高い背と、中性的な振る舞い。
舞台を降りてなお、染み付いて離れないほどあの子を蝕むもの。
「どんな天才でも、体に染み付いた自分の演技を変えるのは抵抗があるんじゃないかな」
その面影を、ここに来て俺は見つけてしまった。
10年という長い期間。
その中で培ったもの。
それに対するプライドはきっと計り知れないほど。
苦悩と、努力の結果。
ほぼ完璧に近い癖の数が、何を参考にしたのかなんて一目瞭然だった。
「天馬くんにとってAさんは相棒だし、逆もそうだよね。
でもそこには、少しの解釈違いがあるのかもしれない。
天馬くんの感じてる“相棒”と、Aさんの感じてる“相棒”は、実は同じじゃないのかもしれない」
どこまでも無垢なふたりにも、
どうしても変えられない壁があるのは仕方ない。
「でもきっと、拒んでるんじゃないよ。大丈夫。
最初からふたりは隣にいるよ。
だって、本当に嫌なら
――――天馬くんの演技を完璧に真似たり出来ないよね」
「……そ、うか」
“舞台の上のあの子に彼の姿が重なる。”
「これで、あってるかなぁ…」
「紬さん、本当にありがとう」
「いやいや!お礼なんていいよ」
珍しく誰かのために頭を悩ませる
不器用な子がそう言ったから。
「これでいいかな――真澄くん」
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春野さん(プロフ) - 完結おめでとうございます!タイトルからこんな風に繋がるとは思ってなくて、思わず涙が出ました。本当に素敵な作品だと思います。この作品に惹かれたのがきっかけで天馬最推しになった位(笑)次回作やアナザーストーリー、あれば期待しています、頑張ってください! (2018年8月31日 10時) (レス) id: 43b6e8fc40 (このIDを非表示/違反報告)
ゴム手袋(プロフ) - いいところで更新停止ー!!!めちゃくちゃいいとこでー!!!待ってますー!!!!! (2018年8月7日 10時) (レス) id: 2405ca442d (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - 狂さん» コメントありがとうございます!嬉しいです…!頑張ります!! (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - Mareさん» コメントありがとうございます!更新できるように頑張りますね! (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
狂(プロフ) - とても引き込まれました!頑張ってください! (2017年12月29日 11時) (レス) id: 4e15e8f7b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一華 顕音 | 作成日時:2017年12月7日 17時