第20話 ページ20
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「監督、読み合わせ手伝ってくれ」
「え…何の?」
「BUDDYの」
「え!?」
最近コイツは、ずっと難しい顔をしている。
忙しさは今までの比じゃなく、学業や稽古に加えてドラマの撮影までこなしてるコイツの体力は割と引くものがある。
でも別に撮影が上手くいってないとか、疲れが溜まって体が辛いとか、そういうわけじゃないみたい。
寧ろ顔はかなりいい感じ。
「23ページの2行目の涼のセリフから頼む」
「わ、私が、り、涼ちゃん、Aちゃん」
「おい、大丈夫か?」
「だ、いじょぶ」
「いやガチガチ過ぎでしょ」
何度も開いてふやけた台本と、付箋の数。
たまたま開いたまま置かれていたそれを、意図せず見てしまったことがある。
ちなみにオレは“ネタバレマジ勘弁派”だ。
最近のコイツは椋の部屋に入り浸っては、少女漫画を読み漁り。
至の部屋に行っては万里とギャルゲをやり。
丞の部屋に行っては、今までの恋愛談などを聞き漁り。
三角にアクロバティックな動きを習い。
生活の半分以上を、どうやら例のドラマに対して注いでいるようだった。
……それはもう病的に。
『お前なぁ、いつも言ってるだろ危ない事するなって!』
「だ、『大丈夫だよ隼人。心配性だな』」
『また涼はそうやって……あーもう!』
「わっ」
「…」
話すことは無いと言うように立ち去ろうとする監督の手を、掴んで引き留める。
「ん?」
荒々しい口調の割に、随分と優しく掴んだような……気がする。コイツにしては珍しいくらい。
素人目にはあまり分からないかもしれない。
けど、コイツの演技を見慣れているオレからとしては、らしくない演技だな、って感じだ。
勿論、そう思うのはオレだけじゃない。
「天馬くん、遠慮した?」
「……変、か」
「…うん、まぁ」
息を吐いて空を仰ぐ。
妙に揺れる目が、何かを探している。
「最初は、寒いんだと思ったんだ」
ポツリと零された言葉は、随分と弱々しかった。
「冬の今に夏のシーンを撮るから、仕方ないと思う。けど、アイツはそんな事しないはずなんだよ。
俺の触り方が悪かったのかと思って何度かやり方を変えてやってみたけど、変わらなかった。
それで、気づいた。
悴んでるんじゃない。
分からないように抑えてるけど、アイツ
――――震えてたんだ」
手を見つめて視線を落とすコイツは、
悲しそうに笑った。
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春野さん(プロフ) - 完結おめでとうございます!タイトルからこんな風に繋がるとは思ってなくて、思わず涙が出ました。本当に素敵な作品だと思います。この作品に惹かれたのがきっかけで天馬最推しになった位(笑)次回作やアナザーストーリー、あれば期待しています、頑張ってください! (2018年8月31日 10時) (レス) id: 43b6e8fc40 (このIDを非表示/違反報告)
ゴム手袋(プロフ) - いいところで更新停止ー!!!めちゃくちゃいいとこでー!!!待ってますー!!!!! (2018年8月7日 10時) (レス) id: 2405ca442d (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - 狂さん» コメントありがとうございます!嬉しいです…!頑張ります!! (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - Mareさん» コメントありがとうございます!更新できるように頑張りますね! (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
狂(プロフ) - とても引き込まれました!頑張ってください! (2017年12月29日 11時) (レス) id: 4e15e8f7b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一華 顕音 | 作成日時:2017年12月7日 17時